なっこ

シンデレラのなっこのレビュー・感想・評価

シンデレラ(2015年製作の映画)
2.7
ああダメだ、私はケイト・ブランシェットが嫌いになれない。
悲しいかな、どうしても、大人の方の心の動きの方にばかり気持ちが持っていかれて少女に感情移入できない。

もちろん幼い頃はシンデレラも白雪姫も鉢かづき姫も落窪物語も大好きだった。お城で舞踏会っていう響きにワクワクしていたし、ガラスの靴に真新しいドレスのキラキラ感に酔いしれていた。ちょっと残酷だけれど、ラストはいじめっ子をコテンパにしちゃう復讐ストーリー版だって許せてた。

12時の鐘が鳴り終わるまでにお城から逃げ切るドキドキハラハラのスピード感も素敵、何より王子様がこの世のものとは思えないほど青い目が澄んでいて美しい、まさに実写版理想の王子様。ひと目で恋に落ちて、舞踏会でダンスを踊るなんて夢のよう…

でも今は、happily ever after めでたしめでたしのその後の人生の方が、気になって仕方ない。

両親に他界されて、彼女に残ったものは大きな家と美しいだけの想い出と悲しみだけ。勇気と優しさと、ありのままの自分。美辞麗句を並べても彼女のその後を救うのは、たったひとつの恋だけ。その構図の残酷さ。もしも、森での出会いがなければ、したたかな継母のワンマン経営になされるがまま、そのままオールドミスになる未来だってあったはず。

恋が、男女の分かち難い結び付きが、全てを丸く収める構図。けれどそれを永遠に喪ったときの運命はあまりにも過酷だ。
未亡人として処世術に長けた継母の生き方を誰が責められるだろう。先に死んだのが実母でなく実父であったなら、ヒロインの母はどう生きただろうか。
継母の語るstoryに耳を傾ける優しさと想像力は、若く美しいヒロインには必要のないものだった。

ディズニーの描く美しく完成された物語は嫌いじゃない。呪うべきは、もはや美しい恋の物語に酔えなくなってしまった私自身の方だ。
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