ねぎおSTOPWAR

シンデレラのねぎおSTOPWARのレビュー・感想・評価

シンデレラ(2015年製作の映画)
4.8
シンダーでエラだからシンデレラ。なーるほど。

ケネス・ブラナー監督「オリエント急行殺人事件」の際、吉田ジャスティスカツヲさんから「ブラナー監督ならこれ!」と、「マイティ・ソー」と共に勧められたのがこれ「シンデレラ」。

「オリエント・・」+「ソー」ではわからなかったのですが、「シンデレラ」まで来て思うことは、《シェイクスピア俳優》というマクラ言葉は彼を理解するためには逆効果ですらあるということ。自身を含め役者の演技を重要視するのは確かだとしても、その視点からでは全景は見渡せないのでは?
ブラナー監督の本領はファンタジーでこそ発揮され、「オリエント・・」はむしろイマイチ??と言っちゃってもいいかも。随所にブラナーさんお好みのカメラワークはあるものの、「シンデレラ」だから解き放たれた演出は多数。

例えば3作品を見渡して特徴だと思う点。
それがどこなのかを説明する場合などに使う、ロングなどから人物に移って行くときに、どちらかというとCGは多用せず、クレーンなどで上から下。
そしてケネス・ブラナー監督的なのは、それを単純な縦じゃなくてカメラパンも同時に行うとか、斜めの動きにするとか。

「シンデレラ」の場合、城の中にあえて高さの変化つけましたよね。通常はワンフロアと王様の場所(通常階段5段程度?)でいいところを、室内に2階席(掘った構造)だし、そもそも外からの導線を階段で登らせて入口を2階部分に!だからシンデレラ登場は扉が開いて入る彼女を後ろからフォローしつつシャンデリア~階下の人々を俯瞰で見せ→正面からのあおりで顔見せてカメラ上昇、さらに(王子の画などインサートはありますが)基本、さっき上がったクレーンが階段を下りる彼女を正面からフォロー。階段は左上から右下に下りなのでカメラもドリー。だから関係性が横軸だけじゃなく縦軸もある。縦横無尽なのでドレスは自ずとヒラヒラキラキラ!!立体的に撮影するためセットデザインから作っています。

外のシーン(スタジオでしょうが)でも姫様さがしのお触れの時、人間の配置を高低差つけてます。2度目のお触れでは驚いて振り向くシンデレラの背後には見おろした形で人々という画だったかと。
屋敷の屋根裏部屋の構造も、単に階段で上がると言うよりカメラがぐーんと見上げるらせん階段!面白いし高低差が伝わりました。
細かい話ですが・・
①父の死を知らされた後の室内ショットはやや俯瞰からカメラ下げて→トラックバック。
②洗濯干しているショットも俯瞰から下げてます。
③肖像画がうんぬんのシーン、親子の会話を縦にしています。
④夜の庭園でのデートもちょっとのクレーン
⑤ガラスの靴を試す行列シーン。奥からパンダウンして真下を俯瞰で。
⑥父王の死の場面。寄り添うシーンを俯瞰からで上昇すると王冠が映るトリッキーなショット。なんで王冠がそんなところにあるんじゃい!

とにかくブラナー監督は通常の人間の視点にカメラを収めず、《妖精の視点》のように上下、高低差をもたらし浮遊させます。
もうひとつ面白いのは、2人が上下関係にある場合、実際目上だとか、上位にいるべき人が下に位置していることが多いのもギャップの楽しさというか面白いです。具体的には国王と王子、ラストの方で屋敷を「あなたを許すわ」と出るシンデレラとケイト。

また高低差の生じない、王子と初対面のシーンでは、まるでダンスを踊っているかのように馬で円を描きながら会話するアップの切り返し。自分が王子、あるいはシンデレラと踊っているような画角!素敵です。
もうひとつ高低差の生じない12時か近づいてきた逃走シーン。横位置からカメラ斜めにしてドリーという不思議ショット!

思えば「オリエント・・」で面白いなと思ったのは冒頭少年が走って折り返すところ、平地から階段上がってたし、風景からの壁も縦。



また、人物の描き方で思ったのが、そこはシェイクスピア俳優たる部分なのか?あの、悪役を最低限威厳を保って描くというか、善悪をそこまではっきりさせないように思うのですが、みなさんいかがです?ケイト・ブランシェットとステラン・スカルスガルドが見事な演技でしたが、国からいなくなったというのはナレーションでフォローしただけで、映像上は保っていたと思うわけです。

是非みなさんもカメラがどこにいてどう撮影しているか考えながらご覧くださいませ!ケネス・ブラナー監督、超おもしろい監督さんでした!
吉田さんありがとうございました!ご指摘なければ観ていなかったかも!