教科書のような脚本。
「参勤交代」というイベントを娯楽として仕立て上げていく仕掛けも見事である。
言葉遣いにこだわり、東北・茨城の方言で移動距離を表現していたのも、よかった。
それ以外は、ご都合主義、誰も死なない安心のヒロイズム。
強さよりもアクロバティックに魅せることにこだわった殺陣がいかにも平成時代劇だった。
この脚本のまま、1950年代の時代劇技術で映画を見たい。
昨今の時代劇には「汚さ」が足りない。
一目で、化粧の汚さだとわかってしまう。
柱の一本一本や着ている布から生活を感じないことに加え、言葉の指導が役者によってムラがある。
どこまで作り込んでも、嘘っぽく感じてしまう。
黒澤明が生活感を出す為に、七人の侍で使用する衣服を1ヶ月間実際に使用させたのは有名な話だ。
現代から離れている時代であるからこそ、「生活感をいかに出すか」が時代劇復活のカギではないか?
時代劇の風合いを出すには、今の日本はあまりにも、豊かになりすぎてしまったように思う。
だが、この映画にそれを求めるのもお門違いなのかもしれない。