さわだにわか

レベル5のさわだにわかのレビュー・感想・評価

レベル5(1996年製作の映画)
4.0
開始1分ぐらいで都市のヴィジョンをヒトの種が持つ内在的な傾向として捉えて「ウィリアム・ギブスンはそのヴィジョンに従い『ニューロマンサー』を書いた」などと言っているのだから政治映画である以前にこれはサイバーパンクなのだ。沖縄戦は映画の中心的なモチーフであってもテーマではなく、そこにプロパガンダ、シミュレーション、メディア、口承、信仰、中心と周縁、一方通行のコミュニケーション、お馴染みの猫と梟…等々の雑多なモチーフが吸い寄せられていくが、なにもわざと小難しく政治的に見ることもない、あり得たかもしれないもう一つの沖縄戦をコンピューターで架構しようとすること(それは一応の主人公の女が失った恋人を象徴的に取り戻すことだ)、その挫折を描いた映画としてストレートに理解すればいいのではないかと思う。サイバーパンクなのである。

決して到達できないまぼろしのレベル5を夢見る女。仮面(アバターだ)で顔を隠したネットの上のもう一人の自分。消えたゲームデザイナーの恋人。押井守は学生時代に観たマルケルの『ラ・ジュテ』に強い影響を受けたと語っていたと記憶しているが、押井はここから『アヴァロン』の着想を得たんじゃないだろうか?
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