wiggling

真昼の不思議な物体のwigglingのレビュー・感想・評価

真昼の不思議な物体(2000年製作の映画)
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アピチャッポン・イン・ザ・ウッズ2016 アンコール!にて。

アピ監督の長編デビュー作にして、世界が彼の才能を発見するきっかけになった作品。こんなもの観せられたらそりゃ熱狂するわ、ってくらいの傑作です。

行商の女性へのインタビューからはじまる本作は、「作り話でもいいからもっと話して」と促された彼女が即興で語る物語に、いろんな人たちがリレー形式で続きを継ぎ足していくというもの。タイの各地を巡りながら口承される物語は、二転三転し思わぬ方へと転がってゆく。

車椅子の少年を教える家庭教師の女性が突然倒れ、少年が助け起こそうとしたその時、彼女のスカートの中から不思議な物体が転げ落ちる。これが最初のプロット。
この物体はもうひとりの少年や、別の家庭教師や、鬼のような化け物に姿を変えていく。物語もメロドラマやSFやファンタジーに変化し続ける。

そしてこの物語は同時に映像化され、物語を語るドキュメンタリーパートとそれを演じるフィクションパートの二重構造をとるようになる。
しかし語る者が演じたり、演技がドキュメンタリーパートを侵食しはじめることで、境界が曖昧になり次第にカオスと化していく。

こういうのどこかで観た気がすると思ったら、アッバス・キアロスタミですね。『クローズ・アップ』『桜桃の味』のような不思議作品と共通するものがある。
アピ監督、キアロスタミのファンだったんだなぁ。彼の作る映画の自由さの理由がよくわかりました。

モノクロで描かれるタイの風俗や景色も大変に美味。そしてこの混沌こそがタイという国の豊かさなのだなぁとも。