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真昼の不思議な物体のryosukeのレビュー・感想・評価

真昼の不思議な物体(2000年製作の映画)
3.6
(35mm)
冒頭のインタビュアーの、作り話で良いから話を続けてくれという指示、クルーたちの会議やインタビューの音声を村人に聞かせる様子を見せる演出、撮影が終わりか尋ねる少年、映り込むガンマイクという要素に、映画の虚構性を覆い隠さないというシネマ・ヴェリテの精神が感じられる。本作はドキュメンタリー、フィクションの両者共に存在する虚構性、作り手の意図を公にする。村人たちへのインタビューの中でお話を考えさせて数珠繋ぎにしていくという本作のアイデア自体の面白さは言うまでもない。
家庭教師の女の「分裂」や虎に変身する挿話など、後のアピチャッポン作品に登場するモチーフが長編第一作で、しかも村人発案で生まれていることに驚く。今ここにある自分以外にも自分が存在し得るというアピチャッポン作品の感覚は、彼独自のものというよりタイの感覚なのだろうか。
椅子の上にジャンプカットで突如登場する少年(不思議な物体役(!))の描写が不自然にならず、まあそういうことも起こるだろうと思わせるのがアピチャッポン映画だよな。
緩やかで不明瞭に連なっていく物語と、(おそらく品質は良くないのであろう)光が白飛びしている粗いフィルムに、夢を見ているのかなという気分になってくる。「トロピカル・マラディ」を見た時に寝落ちしたのを後悔したので、何とか眠気を振り払って(ちょくちょく一瞬意識が飛んでた気もするけど)最後まで見た。
家庭教師と少年の物語が静かに進んでいたところに、スカートから不思議な物体が転がり出ると繋げるセンスは凄いな。その物体が子供になり、女に変身し...という発想をいきなり出来る村人たちのイマジネーションに驚く。
少年が足が不自由な理由として、母親が堕胎に失敗し、飲んでいた薬の影響でそうなったというストーリー(不採用になったようだが)を考える男にも驚く。それまで単なる身体障害であったものが、一瞬で禍々しい刻印に変わる設定で凄い。
テンションが上がったおばさんの「スキヤキ」とかどういう意味合いで使ってるんだろうな。
それまで劇映画として物語を再現してきたところ、突如村人によるミュージカルが差し込まれる自由さと、彼らの語り部としての能力にも感心する。
ラスト間際、スピーカーから音楽が流れかけ、アピチャッポン映画のラストに劇伴が重なる聖なる瞬間が来るかと思ったが、数秒で打ち切られてお預け。なに、俺読まれてるの?
本編?終了後、サッカーグラウンドが突如水没したかのような編集の驚異的な飛躍に驚いていると、何と二つの場所は単に隣接していたという種明かしに呆気に取られる。アピチャッポンマジックだ...。そして、本編とは繋がっていないような、いやそれとも全ては繋がっているのだというような、エピローグ? で終幕。どんな感覚してるんだか。