ちろる

愛の嵐のちろるのレビュー・感想・評価

愛の嵐(1973年製作の映画)
3.7
「愛の嵐」という邦題が生温い、もはや「愛の狂気」といった感じ。
ある意味女性監督らしい倒錯的な愛の描き方が印象的だった。

戦後ナチの残党狩りに怯えながら、名を変え立場を変え生きているかつてのナチ親衛隊の主人公マックス
過去の事実を完全に隠しながらホテルポーターとして働き平穏な生活をするマックスの前に強制収容所で陵辱していた少女ルチアが宿泊客夫婦として現れる。

人妻になった今、自分を玩具のように弄んだ男を求めてしまうのか、ルチアの思いには理解に苦しむけれど、少女だったルチアの生への執着のカタチが彼の性を受け入れる事なのだったとしたら、初めての男であるマックスのあの乱暴な愛され方が身体に染みついてしまったことが彼女の永遠の悲劇でもある。

収容所で青白い顔して怯えてた少女が、やがてナチ党員たちの酒の席でナチス帽を被り、男物のパンツにサスペンダーをかけて上半身裸でサロメのような踊りを披露するルチアの唄うシーンは、男を手玉にとる妖艶な女に変化を遂げていて、この時からすでに2人の主従関係は少しずつ何かが変わっていたのかもしれない。

深い憎悪から生まれた歪んだ愛欲という複雑な女を見事なまでに演じたシャーロット ランプリングの演技はもはや狂気。
前半はルチアの心が理解できないままなぜ?なぜ?という疑問だらけだったけど、後半、周りから見放されて食べるものもない極限の状態で部屋にこもるマックスとルチアの「生と性」の姿を見せつけられた時はもう私に分かるはずない次元での愛の世界なのだと思い知らされた。

この作品の時はまだ20代のシャーロット ランプリングは当時から脱ぎっぷりが良いけれど、痩せた身体なのでいやらしさは全くなくて強制収容所での美少女という役柄にはうってつけの身体つき。
ユダヤ人囚人の少女時代と、裕福なアメリカ人の妻という過去と未来の変貌っぷりも素晴らしくて、やはり昔からすごい女優さんなのだと改めて感じた。
ちろる

ちろる