カツマ

冬冬の夏休みのカツマのレビュー・感想・評価

冬冬の夏休み(1984年製作の映画)
3.9
ひと夏の里帰りを描いただけの話なのに、こんなにもキラキラと輝いて見えてしまうのは何故だろう。夏休みという名の冒険を終えるたび子供たちは少しずつ大人になって、その風景は郷愁という名の懐かしいものになっていく。この物語は監督の子供時代の実体験をもとに描かれており、となりのトトロの公開前にすでに作られていたジブリ風味の作品だ。エドワード・ヤンが何と俳優としてもチラリと登場!後年のクーリンチェ少年殺人事件へと繋がる、台湾らしい瑞々しいカメラワークも見どころです。

トントンと妹のティンティンは母の入院のため、夏休み期間中、台北から遠く離れた祖父母の家で過ごすことになった。厳格な祖父の眼光が鋭く光る母方の実家だったが、トントンは近くの家の子ども達にすぐに溶け込み、川辺の水遊びに混じるようになっていた。一方置いてきぼりを食らったティンティンは、兄たちにイタズラしたりして発散していた。
そんな子ども達の夏休みを尻目に、叔父は恋人を身篭らせてしまうし、強盗を働く輩が暗躍していたり、小さな村に薄い不協和音が響き渡ろうとしていた。

子ども達の無邪気な夏休みをオモテ面に、対して裏面には大人達のゴタゴタや、日常に潜む現実的な恐怖を描き出し、その対比が絶妙にシャッフルされている。建物の角形から覗き込むようなカット、電車を使った写真的な風景など、絵画を連続して見ているかのような映像美も秀逸だ。
夏休みの終わりは少し寂しくて、しかし、悲しい帰路ではない。また戻って来れるから、その時までのサヨナラがとても眩しく感じられました。
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