えんさん

キングス・オブ・サマーのえんさんのレビュー・感想・評価

キングス・オブ・サマー(2013年製作の映画)
2.5
高校生のジョーは気難しい父親にウンザリしている。早々に結婚して家を出た姉はしょっちゅう遊びにくるが、どこか一目置かれている姉と違い、様々なことに口出ししてくる父の存在を疎んじていた。一方、ジョーの親友・パトリックは両親からの過剰な愛情に閉口していた。その愛は分かっていながらも、事あるごとに自分に対して意見をする両親とどこか距離を置きたいと思っていた。夏休みに入ると同時に、互いの親に対する不満が一致した2人は家出を計画し、風変わりな少年ビアジオと一緒に森に隠れ家を作る。男3人の楽しい家出生活が始まるはずだったが、そこにジョーが想いを寄せるケリーが現れたことで事情が変わってくるのだが。。「キングコング 髑髏島の巨神」のジョーダン・ヴォート=ロバーツ監督が、長編デビュー作として2013年に製作した青春ドラマ。

本作を観る直前に、同じく高校生で、同じく夏休みに家出をし、盗難車で旅に出るという「50年後のボクたちは」を観ていたので、何かよく似た内容だなと感じましたが、「50年後〜」が車で旅するロードムービーなのに対し、こちらは家出といっても家の近くの森に隠れ潜み、そこで家を作ってしまって自活しようとする内容なので、少し毛色が違います。自宅近くといっても、田舎暮らしではその距離のスケール感は大きく、3人の少年たちが自然の中でアウトドア・ライフを満喫する姿は観ていても爽快です。ただ、距離はあるといっても、あくまで自宅に戻れる距離(実際にクラスメイトのケリーたちが遊びにこれるくらい)なので、どこか遠くに逃避するロードムービーとはやっぱり話のスケール感が少し小さく感じてしまう。似たような話をやはり直前に観ているので、余計にそう感じざるを得ませんでした。

もう1つ、ロードムービーならドラマの背景が変わり、旅の中で出会う人たちによって、主人公たちの心情が変わったりするのですが、単なる家出にとどまると、家を作るという努力は買うものの、固定した場所でどういうドラマを展開するのかがとっても難しい。古い邦画になりますが、例えば、「僕たちの七日間戦争」という作品では同じ家出をしても、最後は大人たちとの戦争をしかけるという大団円まで発展するので見応えがするのですが、本作はジョーとパトリック、そして2人の間に立つことになるケリーという少女の存在という三角関係的なところに終始して、ドラマが凄く小さくなってしまっている。せっかく、ジョーとパトリックの親たちのキャラクターも個性的だし、2人とともに生活するビアジオが狂言回し的な純ないいキャラになっているのに、そういう素材を使い切れていないのが残念なところ。仲違いしても、男同士の友情が続くぜ、、という感じだけでは、映画作品としては及第点レベルかと思います。