《スポーツの映画》、Vol.12。レスリング①。
スティーヴカレル、チャニングテイタム、マークラファロ。
特にスティーヴカレルがスゴい。
ジョンデュポンという実業家を演じる彼から醸し出される“普通ではない何か”を淡々と演じる。
それが作品全てに乗り移ってて、そのおかしな感じに淡々と周りが飲み込まれていくような。
静かに狂ってる感じ。
本作が当時のアカデミー賞のいくつかの賞にノミネートされてる理由が何となく伝わってきた。
スポーツの映画でありながらこのジョンデュポンから放たれた雰囲気がそうはさせない感じ、スゴい。
スティーヴカレルと言えば、ちょこざいなコメディで腹を抱えて笑えるイメージしかなかったけど、完全に度肝を抜かれた。
真に迫る淡々とした迫力、狂気。
これは実際の話が元になってる。
ジョンデュポンは後に実際に統合失調症と診断されているらしい。
素晴らしい愛国心とスポーツマンたちに光を見せんと起こした行動の中に潜む“ズレ”。
その“ズレ”が少しずつ少しずつ、周りを変えていく。
とにかく財源に物を言わす彼だからこそ、周りも気を遣い、意見ができず、距離ができ、また彼があらぬ方向にボタンを掛け違う。
その繰り返しで“ズレ”が埋まるどころか、悲劇を生み出す。
こんな物悲しい《スポーツの映画》もなかなかない。
彼にとってみれば色んな過去の経験と手に持つ財源で若者を育成し、ただただ選手と国を羽ばたかせたかったことから事を発した道のり。
それがかような常軌を逸した結末となる。
普通のスポーツ映画では味わえない、ある意味センセーショナルな映画。
はっきり言って、スポーツの映画で味わえる爽快さとか感動とか、スポーツの素晴らしさとかはない。
スティーヴカレルの演技とこの結末を背負う物語。
そういう意味でなかなか記憶に残る映画。