安堵霊タラコフスキー

フォックスキャッチャーの安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

フォックスキャッチャー(2014年製作の映画)
4.5
その硬質な映像表現と緊張感溢れる演出で自分のお気に入りの監督となっているベネット・ミラーのカンヌ監督賞受賞作

この映画は静謐な映像も主役格三人の演技も素晴らしいが、特にその三人の緊張を伴う関係性が素晴らしい

この三人の関係は信頼しつつも劣等感を感じる兄と自分の価値を見出しつつも父親のごとく厳しく接してくるパトロンとの板挟みに合うレスラーを主役としており、その感情の揺れ動きを見ているだけでも引き込まれるが、加えてパトロンも指導者として完璧な主人公レスラーの兄に嫉妬心を抱いており、その危うさも戦慄もので見ていてハラハラしたが、そんな危うい男を40歳の童貞男ことスティーブ・カレルが見事に演じているのも面白かった

こういう静かな雰囲気ながらも引き締まる映画を作る才能というのはアメリカだけでなく世界的に見ても稀有なもので、現役の監督だと思い当たるのがアンドレイ・ズビャギンツェフくらいのものだから、そういった意味でベネット・ミラーは貴重な監督であるように思えるし、この映画のような緊張感が画面全体から伝わる作品をこれからも作っていってほしいものだ