高山佑貴

フォックスキャッチャーの高山佑貴のレビュー・感想・評価

フォックスキャッチャー(2014年製作の映画)
4.0
冒頭の弟のシーンでは、長回しを使ったり、生活の様子をしつこく撮ったり、現代的で禁欲的な演出により、映画へ入り込ませることに成功している。

自堕落になってしまった弟はデュポンに平手打ちされ、さらにやる気をなくし、予選でも負けてしまう、その後兄に平手打ちされると、やる気を出し予選を突破する。同じ平手打ちを使い、デュポンと兄の差をつけている。

またデュポンの平手打ちの前の凄まじい間は平手打ちされる予感をたっぷりとくれる。
それも含め、例えば事件を起こす直前のビデオを見終わった後の間も、デュポンの狂気がうまく表現されている。なにも動かないことで、現実は身を潜め、不可視な妄想が動き始めることを予感している。

デュポンが親友が母親の雇われだったことを吐露する後のデュポンが主催のレスリング大会で優勝するところ。それに関わる人物たちの仕草により、未だにデュポンが雇われをあてがわれているのがわかるところがいい。

弟がデュポンの所へ行くことを報告したシーンの兄役のマーク・ラファロの演技は素晴らしい。

金メダリストが講演に来ても盛り上がらない子供達と、総合格闘技に出て行った弟へのUSAコールは皮肉な落差である。