社会のダストダス

GODZILLA ゴジラの社会のダストダスのレビュー・感想・評価

GODZILLA ゴジラ(2014年製作の映画)
3.6
日本では1か月遅れで公開の「ゴジラVSコング」が楽しみすぎて、ネタバレを見ないためにネット断ちを考える今日この頃。ネタバレをうっかり見てしまったら自害の可能性があるので、今後更新が途絶えたらそういうことでしょう。
モンスターバース・シリーズの開幕にしてハリウッド・ゴジラの1作目を再鑑賞。ん…厳密には二度目のハリウッド・ゴジラ?うっ!頭が…!!

一応ゴジラマラソンしていたレビューも「ゴジラの息子」でいったん中断(昭和ゴジラはここから魔境に入るので一呼吸置きたかった)。
サボっていた間に完走したマーベル・シネマティック・ユニバースのおかげで、シリーズ作品に関しては燃え尽き症候群を起こしていたワタクシ。でも、もうすぐやってくるんです、奴らの60年越しの再戦が。あの世紀のバカ映画の決着戦をスクリーンで観られる、何と幸せな時代に生きていることか。

本作を最初に観たときには持っていなかったMCU知識のおかげで、人間側の主役のフォード夫妻(アーロン・テイラー=ジョンソンとエリザベス・オルセン)はクイックシルバーとスカーレットウィッチであると気付く。GODZILLAの方が公開先だったんだな。
渡辺謙にサリー・ホーキンス、ブライアン・クランストンと今にして思うと凄い演技派の面々が集まっている。このあいだ「ノマドランド」で見たデヴィッド・ストラザーンはどこかで見たことがあると思っていたが、本作のステンツ提督だった。何度目かの鑑賞にして、今更キャスト陣にテンションが上がる。
しかし、フィルマのキャスト欄には宝田明さんの名前があるが、本編のどこにいるのか全く分からなかった。

何といってもGODZILLAがちゃんとゴジラなのがまず感動ポイント。見た目はかなり平成ゴジラっぽくなり、放射熱線を備え、ミサイル程度では無傷の耐久力、我々の知るゴジラ先生だ。
核の落とし子だった日本版ゴジラとは違う点は、先史時代から存在している生物ということ。人類に攻撃されても、とことんまでに無関心。進路上の戦艦をわざわざ避けてくれる気遣いには泣けてくる。

ゴジラが王道な怪獣として描かれる一方で敵怪獣のMUTOはエイリアン的なSFホラーチックな印象を受ける。立ち位置的に98年版のアイツに近く、手当たり次第に暴れまわり、二頭でイチャイチャとリア獣し、人類とゴジラを煽りまくる。比較的おとなしい本作のゴジラとは対照的に、殺意の塊で従来のハリウッドのモンスターパニック物に多い恐怖の象徴という感じ。こいつもミサイルくらいじゃビクともしない、何だかんだで米軍をカッコよく描きたいハリウッド映画において、全編を通してここまで米軍が無力だった映画も珍しい。

人間パートはゴジラが初登場するまでの約1時間無難に展開していたけど、主人公のお父さん役のブライアン・クランストンを早々に退場させてしまったのは勿体なかった。息子役のアーロン君はその後の展開では傍観者で、特にストーリーに大きな影響を与えない。渡辺謙も後半は「レッゼム、ファイッ!」くらいしか言わないので、冒頭からストーリーに関わるお父さんが生きていれば、後半のストーリーに厚みが出たかもしれないのに。怪獣の出番が増える後半は神頼み(ゴジラ)になる、実際に怪獣が現れたらそういうものかもしれないけど。

クライマックスの怪獣プロレスは改めて観ると、MUTOの電磁パルスで真っ暗になった黒煙が立ち込めるサンフランシスコの中、真っ黒なゴジラと真っ黒なMUTOが戦うので、なかなか目が疲れる。でも、初めて本作を観たときはゴジラ以外に怪獣が出るとは思ってなかったので、怪獣プロレスが見られて嬉しかった記憶がある。2体のMUTOに対してもそれぞれにクリエイティヴなとどめを刺してくれるが、今度の「ゴジラVSコング」でコング相手に実践しないことを願うばかり。

従来のゴジラ映画にあったおバカ感はあまり無く調味料が足りない感はあるものの、この映画を土台に続編2作は、しっかりと偏差値カットしてヤク漬けでガンギマリの救いがたい脳筋映画に改善してくれたので、本作の存在意義はデカい。
本作やシンゴジみたいな優等生っぽい感じもたまには悪くないけど、やっぱり怪獣映画はバカな方が好み、そういう意味ではマグロ喰ってるアイツの映画も結構好きです。