HicK

オール・ユー・ニード・イズ・キルのHicKのレビュー・感想・評価

4.3
《面白い「死にゲー」作品》

【目で分かる明快さとテンポ感】
前半のスピード感がすごい。タイムトラベルもの特有のルール説明を最小限に、画で見せる事に特化しているので展開もてっとりばやく進んでいく。TVゲームの聖地、日本の原作作品とあってか、"死にゲー"のような「はい次、はい次」とループを活かした展開で釘付けになった。難しい事を考えず、ルールを見せてくれるという演出は魅力的。

【巧みな情報統制】
序盤からケイジと一緒にこの世界のルールを学んだ後は、説明役でもあるエミリーブラント演じるリタが「小出し」に情報をくれる。そして、死ぬ、生き返る、小出しの情報、進展、失敗、死ぬ。これをどんどんリピートしていく。その展開が非常にスピーディーなのだが、コントロールされているような小出しの情報量が心地いい。ボーッと見ていても理解できるちょうど良いバランス。そして「死んだ数だけ学べる」という設定通り毎回違う進展があり、ストーリーの動きを実感できるので見入ってしまう。

【ループが生み出す演出魔法】
要らないシーンを大胆にカットしても、タイムループの仕組みを植え付けられた私たちは「省かれた時間は同じようなループしているのだろう」と想像できる。なので、いくらカットしても内容の厚みや劇中の時間の重みにはさほど影響しないという強みも感じた。それどころか、わざわざシーンを見せなくても一文のセリフだけで時間の重みを表現できるようになっていた。例えば「この出来事は30回目だ」とか「こういう事も試した」などのセリフだけさらっと言わせれば、観客の想像の中に映像化されるという、コスパの良い「厚みの魔法」にかかっていく。ケイジさん、映ってないところでもお疲れ様。と言いたくなる 笑。

【緊張感あるクライマックス】
クライマックスはループが出来ない設定なので死んだらそこでゲームオーバー。前半とは違う緊張感が漂う。死んではいけないという当たり前の事なのだが、やはりループという死んでなんぼの能力を理解した後なので、後半の死に対する危機感はとても強く効果的だった。

【最大の不満】
自分にはほぼ完璧な作品。だが、一つだけ疑問がある。なぜリタは自分がループできなくなった事を知れたのか。解説等で様々な意見を目にしたが、どの考え方もしっくり来ない。リタがループできないというのが大きなキーになっているからこそ、「観客のご想像にお任せ」はちょっとひどい。ちゃんとリタに説明させて欲しかった。この不満は結構デカかった。

【総括】
不満な点はありつつも大好きな作品。トム・クルーズの弱小キャラも貴重で魅力に溢れていた。そして、幼稚園生の時に「スーパーマリオワールド」を遊んでいた時の自分自身を映画にしたような作品だった 笑。たまに年上のいとこが来てアドバイスをくれたりした事も今作と一緒。違うのは自分の手で全クリが出来なかった事 笑。
HicK

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