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イーダのmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

イーダ(2013年製作の映画)
4.0
修道院で育てられた少女が、初めて会う叔母との旅を通じて自らの過去の秘密を知るとともに、戦中・戦後のポーランドがユダヤ人に対して行った闇が明らかにされる。
監督は、14歳の時に共産主義体制のポーランドを離れ、本作で初めて母国で作品を手掛けたパヴェウ・パヴリコフスキ。
原題:Ida (2014)

1962年のポーランド。
孤児として修道院で育てられた18歳の少女アンナ(アガタ・チュシェブホフスカ)は、院長から、引き取りを拒否したが唯一の親族である叔母(母の妹)ヴァンダ(アガタ・クレシャ)がいるので、修道女の誓いを立てる前に会っておくように言われる。
叔母に会ったアンナは、自分の本名がイーダ・レベシュタインでユダヤ人だと知らされる。亡き両親の墓を訪れたいと言うが、墓はおろか遺体がどこにあったかも分からないと言われる。
2人は、イーダの両親が生活していた家を訪れ、両親の最後を知っている人を探す……。
やがて、両親と叔母の幼い息子が埋められた場所、死の真相、イーダが修道院に預けられた経緯が明らかにされる。
叔母との旅の途中出会ったサックス奏者の青年リス(ダヴィット・オグロドニック)に心の揺れを感じていたイーダは、叔母のある行動の後、まだ修道誓願できないと神に許しを乞う……。

「私はアバズレ、あなたは聖女。あんたの神さまは、私みたいな人間を好んだ。マグダラのマリアよ」

モノクロ&スタンダードによる映像が美しい。
"赤いヴァンダ"と呼ばれる検察官として、ポーランド人を容赦なく裁いてきた過去を持つ叔母、
対比して描かれるヒロインに、西洋世界における信仰の重みを見る。
なお、(イーダの)テーマ曲は、バッハのコラール前奏曲「イエスよ、わたしは主の名を呼ぶ」(BWV639)、
ヴァンダの部屋に流れるのは、モーツァルトの「ジュピター」、
ロマの血が流れるリスが演奏するのが、ジョン・コルトレーンの「NAIMA」。
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