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イーダのmegurosのネタバレレビュー・内容・結末

イーダ(2013年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

第二次大戦の傷跡がまだ残る1960年代のポーランドが舞台。孤児として修道院で育てられたアンナは唯一の肉親である叔母ワンダから、自分がアンナではなくイーダであり、ユダヤ人であることを告げられる。出世の秘密を探るため地元に戻る叔母と姪のロードムービー。

ポーランドの田舎は閉鎖的で、土地だけはだだっ広く、死んだような空白の空間が広がっていて寒々しい。農家に匿われていた両親はナチ侵攻の前に殺され、森の中に埋められ、幼かったイーダだけがユダヤ人と分からないため教会に預けられて生き延びた...というポーランドにおけるユダヤ人迫害が露わに。撮影は最初から最後まで静謐で厳かで、両親の亡骸を掘り返し、一族とまとめて埋葬するに至る経過を写していく。

叔母さんのワンダは判事だが、恐らくは戦後のポーランド人民共和国に駐在したソ連赤軍、秘密警察NKVDに協力することで生き残ってきた人物。イーダと共に旅するワンダにとってこの旅は、妹と妹に預けていた息子を探す旅でもあったわけだが、真実を知るに至っては、これまで自らが行ってきた所業と、息子の成長さえ見ることなくそうまでして生き延びるべきだったのかとを思って自ら死を選んだのだろう。撮影は素晴らしいのだが、映画の中で直接的には写されていない諸々の怨念までもが封じ込められた映画とも言える。
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