ただ、ただ、美しい。
幅の狭い、スタンダード・サイズのスクリーンに映し出される映像は、構図が緻密に計算されているのだろう。人物がスクリーンの下や隅に映されて、背景が高く感じられる。バスの窓ガラスや、車のフロントガラスに映る流れる影。モノクロの美しさが冴え渡っている。写真集のページをめくっているようだった。
修道服姿のイーダが、とてもみずみずしいのに、静謐な雰囲気も漂わせていて、心惹かれる。叔母のヴァルダも、気性の激しい女性の美しさが現れていて、イーダと好対照を成している。
ポーランドという国が背負う、辛い歴史。
ラストシーンで胸がいっぱいになる。自分の出自を知ってしまったイーダの決意の現れた気高い表情。流れる音楽はバッハのコラール「主イエス・キリストよ、われ汝に呼ばわらん」(だそうだ)。
極上の80分。