オトマイム

イーダのオトマイムのレビュー・感想・評価

イーダ(2013年製作の映画)
4.0
寂寞とした冬景色とイーダの出自を辿る旅が一貫してフィックスのカメラで捉えられ、その構図ひとつひとつが卓越している。空間の取り方がたいへん個性的。そしてラストだけは移動カメラ。その静謐な映像は何か神話の世界を見ているような神々しさを感じた。
修道服を脱いでドレスを纏った彼女の匂いたつような美しさは、モノクロ映像が一瞬色付いたかと思うほど。修道服ひいては制服というものはこれほど女性の色香を封じこめるものなのだと、改めて思った。モーツァルト、バッハ等の劇伴もよいがジャズの演奏シーンだけが唐突でその異質さが本作のひとつの核となっている。





⑴タイトルに込められた意味

戦前には明らかにユダヤ人とわかるファーストネームというものがあった。女性ならばこのイーダ、ドラ、エステラ、男性ならばダニエル、ダヴィド、ヤクプ等々。つまりこのタイトルは、ユダヤ人の映画だと少なくともポーランド人にはピンとくる。
(現代では響きの良さから敢えてユダヤ風の命名をするポーランド人もいて、名前だけで判断することが難しい。それによって人種的偏見がないと暗に宣言するという側面もあるらしい)



⑵ポーランドにおけるカトリック教会

スターリン時代にカリトック教会は弾圧されていたが、雪解けの時代に入ると両権威は両立し、その後教会は容認される。
『イーダ』の冒頭、しまわれていた古いキリスト像が尼僧たちによって清められ、改めて外に建てられるシーンがあるが、これは雪解けの時代であることを示している(1962年のポーランドが舞台)。


⑴⑵久山宏一氏の講義より