OASIS

幸せのありかのOASISのレビュー・感想・評価

幸せのありか(2013年製作の映画)
3.8
幼い頃から脳性麻痺を患い、植物状態と診断された青年マテウシュが、女性看護師マグダとの出会いによって自分の意思を伝える方法を獲得していくという話。

「怒りを表す時は机を叩くんだ!」というマテウシュの父の言葉が突き刺さった。
極度に変形してしまった指や封じられてしまった言葉では、拳を形作るのは困難であり、確かにそこにある筈の感情を読み取る事が出来ない。
伝えたくても伝えられないもどかしさと、せっかく芽生えた感情を抑えて呑み込む切なさに心揺さぶられた。
時折挿入されるナレーションが、彼の心情と周囲の想いとの乖離とズレを更に助長させていた。

話は、幸せで居心地の良かった家庭がマテウシュが成長していく毎に崩壊の片鱗を見せる幼少期と、初恋や大事な人との別れを経験する青年期とを大体半分程の時間で分け合って描かれる。
主役であるダヴィッド・オグロドニクの、ピンと張り詰めた筋緊張や異常な拘縮具合を全身で表現した体当たりの演技は素晴らしかったが(おっぱい鷲掴みにするシーンだけやけに手の動きが滑らかだった気もする)、幼少期のマテウシュを演じた子役もそれに匹敵するほどの熱演を見せていた。

星を眺めてもの想いに耽ったり、マグダと触れ合ったり、痛い施術に顔を歪めたりと、マテウシュの感情が揺り動かされる場面では、彼の表情やその奥底にある喜びや苦痛を染み込ませてくるかのように映し出す映像が印象的で、よりマテウシュの感情に寄り添いながら観る事が出来た。

まばたきの回数でYesやNoを伝える方法などは「潜水服は蝶の夢をみる」を想起した。

@シネ・リーブル梅田
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