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ダンシング・クィーンのmaverickのレビュー・感想・評価

ダンシング・クィーン(2012年製作の映画)
4.5
2012年の韓国映画。主演は『国際市場で逢いましょう』『ただ悪より救いたまえ』のファン・ジョンミンと、『ミスワイフ』『ノンストップ』のオム・ジョンファ。観客動員数は400万人。オム・ジョンファは、第48回百想芸術大賞の映画部門女性最優秀演技賞を受賞した。


抱腹絶倒のコメディで終始笑えるめちゃくちゃ楽しい映画。しかもかなりの感動作で泣ける。家族愛を中心とした温かい話であり、夢に向かって挑戦することは素敵なことなのだとも教えてくれる。最高に盛り上がる作品だった。

ファン・ジョンミンの役名がファン・ジョンミン。オム・ジョンファの役名もオム・ジョンファ。なんだこの映画、ふざけているのか(笑)。そんなところも笑いにするこの作品。物語は二人が出会う子供時代から始まる。再会した時は二人は大学生。ジョンミンは法学部の秀才に、ジョンファはクラブでシンチョンのマドンナと呼ばれるディスコクィーンになっていた。久しぶりの再会で意気投合した二人は結婚。そして出産。ここまでを駆け足で一気に見せる展開に笑ってしまった。

幼い娘を持つ夫婦となった二人。ジョンミンは苦労して町弁護士になったが稼ぎは良くない。ジョンファは家計を助けるためにジムのエアロビインストラクターとして働く毎日。実家にも頼らざるを得ない状況の中、ジョンファはこんなはずじゃなかったと嘆くのだった。そこに大きな転機が訪れる。知り合いからオーディション番組に誘われたジョンファは、歌手になりたかった夢を叶えるために一念発起する。ジョンミンは人助けが縁で町の有名人となり、テレビの出演なども舞い込むように。さらにそこからジョンファはユニットでのデビューが決まり、ジョンミンは市長選挙に出馬することに。この目まぐるしい展開を、笑いと感動とで引きつける脚本が実に鮮やか。あっという間の二時間だった。

演技派であるファン・ジョンミンの配役が活かされている。情けなさもありながら、温かみのある人柄のキャラクターを魅力たっぷりに演じている。そして要所要所で引き込む力はさすが。市長選で人々に語りかけるシーンでは目頭が熱くなった。

オム・ジョンファの圧倒的存在感も素晴らしい。肝っ玉母さんみたいなキャラで笑わせると共に、ステージ上での圧巻のダンスシーンで完璧なパフォーマンスを披露する。彼女の年齢で、あのプロポーションは驚き。ステージでのダンスシーンだけでなく、地道に練習する姿の美しさも印象的だった。1983年のアメリカ映画『フラッシュダンス』の主人公とも重なる。本作でオム・ジョンファのファンになる人はたくさんいるんじゃないかな。

劇中で流れる曲がかっこよくて最高。ジョンファがばれないように早着替えを駆使するシーンは、さながら『ミッション: インポッシブル』で爆笑。市長選の演出はとてもリアル。議員のあり方を問う部分はまさにその通りだと思う。日本も韓国も、抱える問題と求める要素は同じなのだなと気付く。マ・ドンソクがカメオ出演しているが、まだスリムな容姿で何だか微笑ましい。いろんな楽しみが詰まっていて、豪華幕の内弁当みたいな作品。しかしまあ、これだけ破天荒で様々な要素を詰め込んだ話を見事にまとめ上げたものだと感心する。エンタメ性、メッセージ性共に完成度が素晴らしい。


2012年の韓国映画で観客動員数第9位を記録したのも納得の出来。第8位の『建築学概論』と、数字はほぼ同じなのだからその凄さも分かる。ファン・ジョンミンとオム・ジョンファが最高のカップルだった。
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