なやら

夜の終りのなやらのレビュー・感想・評価

夜の終り(1953年製作の映画)
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面白い!
あらすじに惹かれての突撃鑑賞だったけど大成功。いい作品でした。

主人公は発作的に犯してしまった罪を認めることが出来ず、かと言って根が小心者なので開き直って悪に転ずる事も出来ず、自縄自縛状態で苛まれていきます。
追ってから逃げたいのか捕まりたいのかもハッキリ出来ず、フラフラと街を行き来するばかり。だから逃走中もいちいちツメが甘いし、行動に合理性はありません。でもだからといってツマラナイかというと、これがすごく面白い。自分も同じ状況に置かれたら、同じような行動を取り、同じように追い詰められていくだろうなと思わせる迫真性がありました。

終盤にかけては、作為を強く匂わせて(「清貧」推しが過ぎる)主人公を導くキャラクターが次々登場することで、少し興ざめします。
とはいえ、そう用意立てしてあげないと、この主人公はきっと、自分の力で再び道徳を取り戻すことは出来なかったでしょう。同脚本家による「天国と地獄」の犯人・山崎努は、この主人公のように他人の優しさに触れることができなかったがゆえ、心が捻れ切ってしまった成れの果てなのかもしれません……などとぼんやり考えてしまうほどにのめり込んで観ていました。

物語のことばかり言っていますが、テンポは良く、構図や照明への意識も高く、総じて面白かったです。タイトルをズバッと象徴するラストショットにも痺れます!
なやら

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