荷風の原作ははるか昔に読んだことがあり、その時はほとんど頭に入って来なかったが、アマプラにあったので今回見てみることにした。津川雅彦さんは荷風にそぐっていたと思います。玉の井の風景は実家近くの橋本宿にも似た風景があり、昔の色街にはステンドグラスみたいな窓がなぜかあったのだなあと思いました。お雪のいる店の小窓が、そのステンドグラスと相まって、なにやら教会の告解室みたいに見えたりした。途中出征する学徒出陣のエピソードや東京大空襲の話があり、戦時下の悲惨な話がありましたが、戦後キャバレーで?たくましく生きているお雪らを見ていると、荷風の老後とは明暗を分けたなあと思いました。ひとり孤独に死んでいった荷風、お雪に看取られたらどんなに幸せだったろう、しかし年齢差故にそれを由としなかったのですね。亡くなった舅みたいな死に際でした。
色街ですからお色気シーンがちりばめられていましたが、総じておとなしめで芸術作品ぽい感じでした。何周年記念映画でしたから、そんなものでしょう。背景美術とかは本当に昭和初期という感じでとてもよかったです。昭和のお父さん向けの映画です。