ひろ

ラブホテルのひろのレビュー・感想・評価

ラブホテル(1985年製作の映画)
5.0
88分。全41カット(冒頭の会社ロゴ除く)。
心に傷を負った者同士の交流。
話が切なくて感動的なのは言うまでもないので割愛。
この映画は音が強い。

4カット目
空っぽになった会社内、窓を開けると雨の音がザーッと聞こえて来て、ハエが飛んで来ると雨の音が消えてハエの羽音だけになり、寺田農がハエを新聞で叩き殺すと、雨の音が復活する。

15カット目
佐藤浩市が「あんまりさぁ、私用で使っちゃマズいんじゃないですか」と言って去った後、速水典子が建物から出て来るのが分かってタクシーをバックさせる。
山口百恵『夜へ…』がラジオから流れ始めるのと同時に、ハイヒールの「コツコツ…」という音と共に速水典子が出て来る。

27カット目
寺田農と速水典子が家の前に来た時の電車の通る音と電車の光。

28カット目
会社内を逃げ回る速水典子を志水季里子が追い掛けるのをカメラで追い続けるが、志水季里子が映っていない所で彼女の罵声がずっと聞こえている。

34カット目
雨の音と立ち去る音

以上の5点、音が剥き出しになっている。

あとはエモーションがダダ漏れ。

17カット目
埠頭に着いて、タクシーから速水典子が降り、
寺田農「この辺じゃ、帰りの車 拾えませんよ。お待ちしますか?」
速水典子「いいの。海底の人魚の国に帰るんだから」
と言って、2人が別れ、速水典子は埠頭へ行き、寺田農のタクシーは去る。
バックでは山口百恵『夜へ…』が流れているが、速水典子が自殺すると思って、寺田農が勢い良く戻って来た瞬間に曲が止まり、そこからの会話のやり取りは感情が高ぶりまくる。

26カット目
埠頭に2人で来て寺田農が、『夜へ…』が収録されたLPを速水典子に渡す。

31カット目
速水典子が、寺田農からもらった山口百恵『夜へ…』を流しながら男へ電話して、電話を切られた後も1人で話し続ける。

以上の3点はエモーションで満ちている。

気になったのは、23カット目と24カット目。
タクシーで再会してから、速水典子が寺田農の事を思い出すのが20カット目。
速水典子がタクシーを指名して呼びつけて、また会うのが23カット目だが、ここは外が明るくて昼間なのは間違いない。そして、速水典子は「新宿まで」と告げる。
次の24カット目も同じタクシーのシーンだが、周りは真っ暗でどう考えても夜だ。
新宿まで行くのに、そこまで時間はかからないはずだから、2人は意識的に長時間過ごしているわけだし、その時間の流れが2人の心の距離を縮めている。
でも、「新宿へ行くだけ」というのがあるだけに、この2カットは不思議すぎる。

観る度にどんどん気になる所が出て来る面白さ。大傑作!