2014年、映画館で見た中で1番心に残った映画。
強く伝えたいのは、障害を持つ子供とのハッピーな時間を描いた物語性の濃い作品ではないということ。
一筋縄ではいかない人間の複雑な感情と同じように、複雑な内容。
ドラマチックに起承転結を結ぶのではなく、どこか淡々としているため
「自分の価値観を最善と思い込み、同性愛者は異常で普通の人間ではないと存在を認めなかった結果、起こってしまった出来事。」
を冷静に考えさせられました。
英国を始め様々な国で同性愛者は罪人と罰せられていた歴史があり、(『イミテーションゲーム』のアラン・チューリングも法の被害者)
1970年アメリカでも、命は取られないにせよ同性愛者は罪人というキリスト教の考えが強く残っていて、性的少数派は大変惨めな扱いを受けていたであろう状況。
つまり、この時代の正義・価値観では同性愛者=悪だった。
裁きを下す側の人々はもちろん自分は間違っていない、むしろ正しい事をしていると思っています。
時代背景を踏まえれば、ここまでは理解できます。
けれど、どうしようもない不甲斐なさを感じたのは
・誰が1番犠牲になるのか。
・誰が1番悲しむのか。
この2点を裁く側達は気に留める事が出来ていなかった。
ここがもうやるせない。この現実が悲しくて涙がブワァッともう止まらない。
この、怒りにも似た感情を持つ事が出来たのは、近年で同性愛についての見方が柔軟に変わっているからなのかもしれないです。
これが70年当時に公開されていたとします。今ほど心に響いたのか、と思えばそうじゃないかもしれない、それがすごく怖い...生まれてないけど...
自分の尺度でものを考えるのではなく、世の中に定着した価値観を基準に考えてしまうと、そこからはみ出た人は追い詰められる。
同性愛に限らない事ですよねこの問題は。
裁く人々をもっと憎らしく思えるよう話を作ることも出来たのでしょうが、あえてそれをしなかった制作側。刺激的すぎないリアルさで、冷静な視点を与えてくれました。
広い視野がどれだけ大切かを再確認させてくれるような、深い映画です。