ダンクシー

チョコレートドーナツのダンクシーのレビュー・感想・評価

チョコレートドーナツ(2012年製作の映画)
2.4
「差別じゃない 現実だ。」

1970年代のアメリカの実話に基づく。ショーダンサーのルディは弁護士のポールと恋に落ちる。2人は男。そして薬物中毒の母を持つダウン症の子供マルコを引き取って3人で暮らし始める。しかし、その幸せの日々は長くは続かない束の間の事だった...。

はっきり言ってこういう映画自体俺の好みでは無いし、俺は綺麗事が嫌いな人間です。が、この映画のように不当に扱われ差別や偏見を受ける事を綺麗事なんかで見過ごしていいはずがないし、それは綺麗事なんかじゃない。

正直感動は全くしなかったです。ただ、すごく胸が痛かった。終始締め付けられた。世界の理不尽さを痛感した。そこに涙なんてないんですよ。ルディとポールは法廷で愛を主張し叫ぶ。この映画は我々に訴えている。世界に根強く存在している問題を、本当に綺麗事だけではどうしようもない、残酷な現実。タイトルの可愛らしさからは想像つかないほど重く恐ろしい話。切なくて儚い、救いのない現実が鮮明に描かれていた。

同性愛者だから子供も作れないし時代的に親になんかなれない。だからルディは自分のすぐ近くにいた力のない可哀想な子供を、見捨てる事なんか出来なかった。本心から助けたかった。でも認められない。どうしようもない。だって"異常"だから。世間で"異常"は認められないから。こんなのおかしいし、クソすぎるけど、その概念を覆す事なんて不可能だった。だからこそ、我々一人一人がしっかり向き合って目を向けなければならない。

差別が酷く、ゲイとバレるだけで仕事がクビになる。同性愛という事実が全てにおいて不利になる。マルコはダウン症だからまともに会話にも応じられないし、誰も養子になんかしたがらない。マルコは、醜い人間という生き物に殺されたも同然。正義なんて存在しない。元上司や判事などに手紙を送るシーンがあったが、全員の神妙な面持ちがあまりにも嘘くさすぎて「いらねー!」ってなった。でもあの手紙はあいつらに向けてじゃなく、鑑賞側に向けてるものだと思う。

にしても、マルコがハッピーエンドが大好きだったってのが本当に皮肉。
普通じゃないやつは死ねという、それが社会。人生はハッピーエンドでありたい...。
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