Shelby

チョコレートドーナツのShelbyのレビュー・感想・評価

チョコレートドーナツ(2012年製作の映画)
4.8
「法律の隙間から零れ落ちる子供を救いたい」 そんなポールの言葉が胸を打つ。
つい近年まで、そしておそらく今でも、差別と偏見の歴史は時を選ばず繰り返されているはず。法律と愛情を天秤にかけても、最後は法の壁が立ちはだかる現実もある。 扱うテーマがテーマだけにいわゆる人気スターは一人も出ていない。
それでもゲイのカップルを演じる名優アラン・カミングとギャレット・ディラハントが素晴らしい。 それにもまして存在感を示すのがマルコを演じたアイザック・レイヴァの無垢なる姿。 自らの意思でダウン症のプロの俳優を志しているという彼の存在なくしてこの作品は成立しなかった。

かつて「レインマン」(1988)でダスティン・ホフマンがサヴァン症候群患者を演じて高く評価されたことを振り返るとアメリカの映画製作の現場もずいぶん変わってきたということだろうか。
映画のラストシーンは無言でスクリーンと対峙してほしい。 まさかこんなに切ないラストシーンが待っているとは誰が予想しただろうか。

そしてエンドロールが始まったらそのまま歌声に耳を傾けて余韻に浸ってほしい。 ドーナツが好きなマルコがポールから最初にもらったチョコレートドーナツから。 そのとき彼が発した「Thank you」の言葉がいまでも耳に残る。
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