HirotoMori

チョコレートドーナツのHirotoMoriのネタバレレビュー・内容・結末

チョコレートドーナツ(2012年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

<原題:Any Day Now>

話自体は実話ではないが、ゲイパートナーと障害を持った子の事実に着想を得ているというこの映画。

こんなに美しく切ない悲劇は初めてだ。悲劇でいうと”Life is Beautiful”を思い出すが、あれはまだ妻と息子に残した希望がある。一方でこの作品は完璧な悲劇として終え、めちゃくちゃ刺さるものを残していく。美しい家族愛の形と、アイデンティティ差別の歴史的な悲劇をひしひしと感じることができる名作だと思う。

障害者という形と、同性愛者という二つの形のマイノリティー。映画の中ではあらゆる罵詈雑言が飛び交い、その中で強く生きていこうとする3人と、その幸せが一生続くわけではないと直感している3人のふとしたところでの表情、演技は素晴らしいと思う。
特にAlan Cummingの微笑み、力強い歌声、温もりのある眼差しは高く評価されるべきだと思う。

ただあいにく日本版タイトルは少し残念かもしれない。「チョコレートドーナツ」ではMarcoという障害を持つ少年を中心にしたものとなる。
けどこれは普遍的なメッセージを持つ映画だ。Rudyの最後の歌では、自分たちの幸せを奪った人たちを誰一人として恨んだりしていない。それは仕方ないからだ。そういう社会である以上どうしようもなかったからだ。だから一生懸命生きて心の声を叫び続けるしかないのだ。だから「Any day now I shall be released」なのではないだろうか。
HirotoMori

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