てっぺい

チョコレートドーナツのてっぺいのレビュー・感想・評価

チョコレートドーナツ(2012年製作の映画)
4.0
【チョコっといびつな真理愛】
LGBTカップルが他人の子(障害児)と次第に家族になっていく。少しいびつだからこそ、彼らの魂で繋がる真実の人間愛に胸を打たれる。迎えるラストは、事実に基づく物語である事を考えると衝撃以外に言葉がない。
◆概要
1970年代のアメリカ・ブルックリンで実際にあった「障がいを持ち、母親に育児放棄された子どもと、家族のように過ごすゲイの話」。
監督:トラヴィス・ファイン
出演:テレビドラマ「グッド・ワイフ」アラン・カミング、「LOOPER/ルーパー」ギャレット・ディラハント。
◆ストーリー
ショウダンサーとして日銭を稼ぐルディと、弁護士のポール、そして母の愛情を受けずに育ったダウン症の少年マルコは、家族のように寄り添って暮らしていた。しかし、ルディとポールはゲイであるということで好奇の目にさらされ、マルコを奪われてしまう。
◆感想
障害を持つ他人の子と暮らすLGBT。これだけで見たくなる。蓋を開ければ、そんな不揃いな人物達が魂で繋がる人間愛を見せつける、心にずっしり残る映画。しかも実話に基づくストーリー。まさに史実は小説より奇なり。

◆以下ネタバレ

◆人間愛
性別の差を乗り越えるカップルが、障害のある子供を引き取る、ましてやそれが血の繋がりもないのだから、その“いびつ”な関係がどう繋がっていくのか。そんな始めの疑問が吹っ飛ぶ程、まるで本当の家族のように、美しい家族になっていく様が心地いい。ルディの人間味にどんどん惹かれていくし、マルコのチャーミングな笑顔にほっこり。マルコがチョコレートドーナツを食べる時の笑顔が最高でした。そしてポールの法廷での激昂。“この世に太った障害児を守りたい人なんていない、私たちしか”には、胸を打たれた。そしてその分、その家族愛が水泡と化すラストは、涙なしには見られなかった。
◆マルコ
正直、見た目にも完全にダウン症と分かるマルコ(アイザック・レイバ)が、ちゃんと演技が出来ていることに少し驚いてしまった。調べると、ダウン症にも色んなレベルがあって、中には大学を卒業する者もいるのだとか。無知な自分を恥じる。こんな自分のような人間の為にも、この映画が存在する価値は十分にあると思う。そんなマルコに対する偏見や、ルディに対する差別意識、色んな問題提起を投げかける映画だった。
◆映画表現
始めは口パクで歌うルディが、自らの声で歌う夢を追いはじめ、そして掴んだステージで自分の声で歌い、感情を爆発させるラスト。歌を通じて、一人の人間が自らを解放していく姿が、この映画の軸となる映画表現だったと思う。ルディが歌う歌詞には各シーンで意味のあるものが並べられていたけど、ラストの“いつの日か必ず解放される”と歌うルディからは、マルコへの想いはもちろん、差別意識や社会制度に対する痛烈な怒りと悲しみが伝わってきた。
◆食べたくなる
見る前から分かっていたけど笑、チョコレートドーナツが食べたくなるのは、もう映画ファンあるある。自分用メモとして最近見たものから列挙。「グリーンブック」のケンタッキーフライドチキン、「パラサイト 」のチャパグリ、「ハーレイクインの華麗なる覚醒」のエッグサンド、「クレイマークレイマー」のフレンチトースト、、

LGBTの映画は数知れど、そこに障害児、家族の在り方が複雑に、でも美しく絡んでいく素晴らしい映画でした。性的マイノリティの抱える問題をいくつも伝えてくれる映画であり、マイノリティ・マジョリティにかかわらず人間の真理をつくような映画。見る価値アリでした。
◆トリビア
○主演のアラン・カミングはLGBTである事を公表している。(https://eiga.com/person/12400/wikipedia/?yclid=YJAD.1587001956.kPQNDsqdcq12FVxHyeLIVIMAMk6BvguW_TbReJ4cT0Pbei7VvYUY0mxjySI40Q--)
○マルコ役のアイザック・レイバは、母親が設立した障害を持った成人のための演劇学校パフォーミング・アーツ・スタジオ・ウェストに所属、本作で俳優デビュー。(https://eiga.com/person/283110/)

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