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チョコレートドーナツのYYamadaのレビュー・感想・評価

チョコレートドーナツ(2012年製作の映画)
4.0
【ヒューマンドラマのススメ】
 ~映画を通じて人生を学ぶ

◆作品名:
チョコレートドーナツ(2012)
◆主人公たちのポジション
ダウン症の青年とLGBTカップルの
 同居者
◆該当する人間感情 (24種の感情より)
 軽蔑、愛、絶望

〈本作の粗筋〉 eiga.comより抜粋
・1979年のカリフォルニア。歌手を夢見ながら、ショウダンサーとして日銭を稼いでいるルディと、正義を信じ、世の中を変えようと弁護士になったポール、そして母の愛情を受けずに育ったダウン症の少年マルコは、家族のように寄り添って暮らしていた。
・しかし、ルディとポールはゲイであるということで好奇の目にさらされ、マルコを奪われてしまう…。

〈見処〉
①僕たちは忘れない。ぽっかりと空いた
 心の穴が愛で満たされた日々——
・『チョコレートドーナツ』(原題: Any Day Now=いつの日か)は、2012年に製作されたドラマ映画。
・本作は「1970年代のニューヨークのブルックリンでゲイの男性が育児放棄された障害児を育てた」という実話に着想を得て製作された作品。同性愛に対する差別と偏見の環境下のもと、育児放棄された子どもと家族のように暮らすゲイカップルの愛情を描き、トライベッカやシアトル、サンダンスほか、全米各地の映画祭で観客賞を多数受賞した。
・2020年には、東山紀之・谷原章介ダブル主演、宮本亞門演出により舞台化された。

②映画コメンテーターの仕事
・アメリカで高い評価を受けていた本作だが、2014年の日本公開の当初の上映館数は1館のみ。日本の配給会社は複数のテレビ局に本作の紹介を要請するものの「ゲイカップルとダウン症の映画など紹介できない」と断られ続けたという。
・しかし、映画コメンテーターのLiLiCoはTBS『王様のブランチ』にて号泣しながら本作を紹介。その翌週から上映館が140館に増え、日本でも広く知られるきっかけとなった。
・LiLiCoは後年に「高い評価を受けていた傑作が、偏見によって紹介されなかった」「テレビはLGBTQの人たちに支えられている業界なんだから、そろそろトップも意識を変えていかなきゃいけない」とコメントしているそうだ(Wikipediaより)。

③結び…本作の見処は?
◎: 邦題『チョコレートドーナツ』のイメージどおりハートフルな作品…と思いきや、同性愛に対する激しい差別と抵抗が描かれている力作。多くの鑑賞者は、本作序盤に登場するLGBTのイロモノ・パフォーマー、ルディに対して良い印象を持てなかったはず。マイノリティーに対する偏見が如何に根深いかを認識出来ると同時に、その偏見は「解消出来る」「解消しなければならない」と気付きを与えてくれる。
◎: エンドロール前に、歌手となったルディが歌う(かつてザ・バンドや忌野清志郎もカバーした)1968年のボブ・ディランの名曲『I Shall Be Released』が作品の余韻を遺さずにはいられない。—いつの日か、僕たちは解き放たれるだろう—感情を強く揺さぶられるほど、やるせない。
○: 3人の愛に溢れた日々を刹那的かつ丁寧に描写されていることが本作の救いとなっている。
×:「実話に着想を得た作品」としながらも「障害児を育てたゲイはカップルではなく歌手にならずクビにならない」「マルコの親権を巡る裁判はしていない」「悲劇的なラストもフィクション」など、典型的な実話詐欺手法のプロモーションは今後排除されたい。でないと、せっかくの傑作が「憤りを感じるでしょう?」と製作者に悪意のある誘発を感じることになる。

④本作から得られる「人生の学び」
・「LGBTや知的障がいに差別のない世界に、いつの日か…」と願望にせず、日々の生活から偏見を排除すること。
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