masayaan

フルートベール駅でのmasayaanのレビュー・感想・評価

フルートベール駅で(2013年製作の映画)
3.5
これもまた、意味もなく警察に殺された者の物語であり、こう言ってよければ・・・ブラック・ムービーである。「What's going on?」と、彼ら・彼女らはいつまで泣き叫べばいいのだろう。とは言え、この映画を悪く言わない(言えない)のは、もっぱら倫理的な、心情的な理由である。映画としては、というか、人としては間違ったことはそれほどしていない筈なのに、同情と感傷にしか訴えてくるものがないのは、これが正しいことしかしていない映画だからなのだろう。

実際、英米の意地の悪い批評家は「監督が、自分が善良な人間であることを示したいがためだけに撮られた映画」などと言っており、被害者とその周囲の人間関係は(綿菓子のような音楽やマジックアワーの繊細な光のとともに)甘美に描かれ、その外側にいる人はひたすら無慈悲な存在として、結論的には「警察酷い!!」という結論にしか達することのできないシンプルな《追悼》の演出にしかなっていない(人物背景の中立的な描写が致命的に不足している)。

「その後」については何本かネットのニュースを眺めたくらいだし、「彼」が黒人でなければ少なくとも撃たれることはなかったろう、ということは言えても、少なくともこの映画を啓発用のドキュメントとして観るならば、深層的には差別問題が背景にあるのだとしても、表層的には警察という路上の超巨大権力をどう「監視」するかという議論に進まざるを得ず(彼らの「意識」を啓発して変えるのはほとんど無理だろう、残念ながら)、そうした話のキッカケになればそれで十分と言えば十分なのだろうが、これでは程よく「消費」されて終わってしまうのではないかと少し心配になった。

https://www.youtube.com/watch?v=bmJukcFzEX4
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