突然途切れる線路…。
突然にその青年の
人生という線路は、
ある駅で途切れてしまった…。
余りにも突然で酷き事実。
「フルートベール駅で」
泣けました。その悲劇の重さに。オスカーと言う22歳の青年に起こった事実に。人の人生に…。
2009年元旦、オークランド、フルートベール駅で無抵抗の黒人青年が白人警官に抑えつけられ、射殺されました…。黒人青年、オスカーの最後の24時間をドキュメンタリー調で追った作品です。
冒頭、その事件を撮影した携帯の映像が流れます。事実として。結果はわかっていたんです。それでも酷さや悲しみや怒り、感情が湧き出したのは、監督、演者の巧みさであると思います。
何気ない１日です。大晦日。その1日に集約されたオスカーの人生。彼は聖人君子ではありません。貧困から抜け出すため、売人であったことも、服役したこともある。仕事もクビになっている。ただ彼はやり直そうとしていました。母、彼女と娘のために…。良き夫であり、良き友人であり、良き息子であろうと。優しい彼と言う人となりをシーンの丁寧な積み重ねをもってドキュメンタリー調に描き、彼に感情移入させていきます。
その彼と何も関係ない、彼を全く知らない、突然出てきた白人が、数カットも映らない警察官が…
彼を殺します。
その余りにも酷い暴挙に、言葉がありません。黒人差別を声高に叫んでいるように見えない作りから、真っ逆さまです。事実を知りながらももしや…と思わせるほどに、その辛いながらも温かい日常は一瞬にして破壊される。その恐ろしい対比が映画としては素晴らしい効果を産んでいます。
差別や貧困、アメリカの闇の深さ、死と隣り合わせの日常を見事に描いたのは黒人監督ライアン・クーグラー。彼の初監督作品です。そしてオスカーを演じるのはマイケル・B・ジョーダン。後にクリード、ブラックパンサーでもコンビを組む２人の最初の作品です。
クーグラーの才気とジョーダンの自然で繊細な演技は本当に素晴らしい。クリードでファンになりましたがこの作品も、素晴らしかった。クーグラーにやや素人臭さが残っている所もありますが、かえってそれも良いと感じます。また彼の母、彼女、娘も心に残る名演でした。
マイケル・B・ジョーダンは新たな黒人俳優の代表になってきています。近い内にオスカーをとると思いますね(^^)
