回想シーンでご飯3杯いける

ジュラシック・ワールドの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

ジュラシック・ワールド(2015年製作の映画)
3.5
「ジュラシックパーク」('93年)が、恐竜そのものの怖さを描いた作品であったのに対し、本作はバイオテクノロジーの危険性や、テーマパークの安全管理における脆弱性、言い換えれば"人災"の恐ろしさを描いた作品だと思う。恐竜を商品と捉えるクレアと、生物としての恐竜に敬意を持つオーウェンをメインに人間ドラマを構成している事からも、本作がその構図を意識しているのは明らかだ。

更に劇中で「恐竜は今や人間の手に負えない脅威となった」という台詞が登場する。また、人間に危害を与えた恐竜を射殺する事の経済的損失を懸念する描写も登場し、これはもしかすると原子力発電所の比喩なのではとさえ思えてくる。

原作に比べパニック映画としてのスリリングな描写が不足しているのは、このように、本作が原作とは違う構図を目指して作られているからなのだと思う。原作にあった厨房での恐竜との"かくれんぼ"のシーンは、スピルバーグのキャリアに於けるベストワークのひとつだと思っているし、それに匹敵するシーンが本作に見当たらないのは確かに残念ではあるけれど、これはこれで、現代的な「ジュラシック」作品なのだと思う。