14年ぶりに製作されたジュラシックシリーズ第4作。
『炎の王国』公開直前に4DXでリバイバル上映されていたので復習観賞。
本作は、公開当時の興行収入歴代最高を叩き出した超大作。
売上ほどには評価が高くない声も聞きますが、個人的には近年もっとも楽しかった映画の1つです🐾
<以下、ネタバレあり感想>
【1】ジュラシックシリーズの演出について
1993年公開の『ジュラシック・パーク』にて、
突如目の前に現れたブラキオサウルスを見て驚愕、あんぐりと口を開けたままその巨大な姿にただただ呆然とし、そして数秒後、笑顔になるグラント博士と助手のサトラー。
映画史に残るこのシーンで、スクリーンの前の観客は皆、博士らと同じリアクションをとりました。
ILMが誇るCGの新技術によってスクリーンに描き出されたブラキオサウルス。それは着ぐるみやストップモーションといった従来の技術ではありえない映像。
本当に生きているようにリアルな質感の恐竜が劇場のスクリーンに現れた衝撃に、観客はただただ呆然とし、そして数秒後、笑顔に。
いるはずのない恐竜を見た劇中の人物の体験・リアクションが、革新的な映像技術を見た観客の体験・リアクションとそのまま重なることで、ジュラシックパークは伝説の映画となりました。
時は流れて22年後の2015年。
本作『ジュラシック・ワールド』においても、劇中の登場人物のリアクションが、そのまま我々観客のリアクションと重なることで物語に入り込める演出が随所になされています。
これぞジュラシックシリーズ的映画演出!
◼︎ようこそジュラシックワールドへ
恐竜大好きな11歳の少年グレイは、かねてより楽しみにしていたパークについに到着。
「早く早く!」と兄を急かしながら扉を開けた彼の前に広がる、広大なパークのエントランス。そして流れるジュラシックパークのテーマ曲。
旧シリーズで夢と消えた恐竜のテーマパークが実現している驚きと、これから始まるこの映画に対する期待感/高揚感は、そのまま劇中のグレイ少年の高ぶる気持ちと重なります。
シーンは切り替わり、株主たちを出迎えるクレアはエレベーターが開くと一言
『Welcome to Jurassic World』
このセリフにより観客はジュラシック・ワールドの世界に招き入れられます。
ちなみにこのセリフは『炎の王国』では別の意味で用いられていましたね。
新シリーズの3作目でもこのセリフは重要なところで使われそうな予感。
◼︎みんな恐竜に飽き始めている
第1作ではそこに恐竜がいるだけで興奮が。しかしジュラシックワールドがオープンして時間が経った今作の時代では、慣れもあり、人々は普通の恐竜では物足りなくなってしまっている。
クレア『新しいアトラクションで客を呼ばないと』
これはスクリーンの前の我々観客のことを示したメタ的なセリフでもあります。
ただ恐竜をCGで描くだけで観客を興奮させられた22年前とは異なり、現代の観客はもはやスクリーンにCGの恐竜がただ登場するだけでは驚いてくれない。
怪物的なハイブリッド恐竜vs人間。
恐るべき力と知能をあわせ持つシリーズ最恐の規格外モンスターを登場させることで、観客を興奮させねばならないという悩みを劇中のキャラの口から語らせます。
◼︎インドミナスレックス vs 捕獲班
「開発に2600万ドルかけた奴を殺せるか?」
恐るべきモンスター、インドミナスレックスを相手に麻酔銃や捕獲網で立ち向かう捕獲班たち。
それを見たオーウェンが一言
『男たちは死ぬ』
恐竜相手にナメた態度で対応にかかるシーンを見て
「あっ... これ死んだわ...」
と観客は察してしまうのが毎度のお約束ですが、
本作ではそれを主人公の口から言わせてしまいます(笑)
初見時、
「こいつら死ぬな(確信)」
って思った1秒後にオーウェンの口からそれがセリフとして出てきたので、あまりのタイミングの良さに声出して笑ってしまいました。一応緊迫感あるBGMも流れているシーンなのですが。
◼︎超カッコいい!
本作でもっともテンションのアガるシーンの1つが、インドミナスレックス打倒のために解き放ったラプトルと共にオーウェンがバイクでジャングルを疾走するシーン。
超ハイクオリティなCGで駆け抜けるラプトル/マイケルジアッチーノ作曲の勇ましいBGM/凛々しい表情でバイクを駆るクリプラ。
「ナニコレかっこよすぎるううう!」
スクリーンの前の観客が思わず拳を振り上げたその瞬間、劇中でザックくんが一言
『おばさんの彼氏、超カッコいい!』
ザックくんと観客の心が完全一致するたまらないシーンです。
【2】登場人物たち
今作は過去作と比べて、登場人物が全体的に好感度高い印象。
このシリーズは毎度毎度、よくも悪くもイライラさせられるキャラクターが登場していましたが、本作はそういったキャラがおらず、終始気持ちよく観賞ができます。
◼︎オーウェン
強く冷静で頼もしい新シリーズのヒーロー。
初登場シーンでは太陽を背にしてシルエットのみで登場。
そして発したセリフが
『Eyes on me!(オレを見ろ!)』
これ、もちろんラプトル四姉妹に言ってるのですが、同時に観客にも向けられたセリフだと思って見るとめちゃカッコいいセリフ。
◼︎クレア
個人的には本作の主人公は彼女だと思っています。
公開当時、ハイヒールでの疾走が非現実的だという批判が多かったですが細かいこと気にしすぎじゃないかなと思います。
仕事人間で売上と数字のことしか頭になく、スカしたピンヒール履いていた彼女がアパトサウルスの最期を見て涙を流し成長。
「そんな格好じゃ無理だ」と言われ、腕をまくって上着の裾を縛るクレア。
巨乳を見せただけじゃないかというツッコミは野暮というものです。
完璧にカットされたボブカット&スカした白スーツの鼻につく女が、
惜しげもなくその胸元をさらすことによって、観客男性の心をわしづかみにし、彼女を全肯定すべきヒロインへと変身させたのです。そういう仕掛けというか、ギャグだと思っています。
・翼竜をライフルで仕留める姿は最高。
・ラストは彼女の行動をきっかけに勝利を呼び込む熱い展開が用意されており最高。
・発炎筒を手に9号パドック前に仁王立ちする彼女のシルエットと、その直後に登場する最高のヒーロー&ジュラシックパークのテーマ曲!
あまりにベタでありながらシリーズ史に残る名シーンとなりました。
また、序盤の彼女は仕事人間ではあるけれど、
ヘリの操縦にビビる姿はかわいいし、甥っ子たちに対する愛情は序盤から感じられる部分なども好感度が高いです。
また、甥っ子たちの身を案じるあまり大声で「ザーーック!グレーーイ!」と叫んでしまうも、
オーウェンに「その声で俺たちは死ぬぞ」と諭されてすぐ理解してやめるのも素敵。
ファンなら誰もが、ジュラシックパーク3で息子を案じるあまり大声でその名を叫び続けてピンチを招き、観客のヘイトを一身に集めてしまった母親と対比して、クレアに好印象を抱くようにできています。
女優さんの演技力なのか、監督の演出なのか、今作は登場キャラの大半を、共感できる好感度の高いキャラクターとして描こうとしていることが伝わってきます。
◼︎グレイ&ザック
本シリーズの子役といえば、恐竜相手にパニックになることでナイスリアクションを見せて恐怖感を煽る役割が定番ですが、この2人はとても好感度が高いです。
ルックスがいいのもありますが、
「そうそう!僕もこんな子供だったなあ!」って誰しもが共感できるキャラクターであることが大きいと思います。
・テーマパークに来園してテンションが上がりすぎてとにかく走り出してしまうグレイ
・そんな弟を見て「落ち着けよ」って感じでクールぶってしまうザック
・普段はガキ扱いしていながらも弟思いな一面を見せる兄
・ガレージで車を修理するという共同作業に成功して「やったぞ!」ってテンション上がる兄弟の姿
自分も少し年の離れた弟がいるのですが、自身が高校生ー弟が小学生くらいの頃はこんな関係だったな、って共感できるのでこの2人は大好きです。
◼︎マスラニ社長
この手の映画の「社長」ってたいがいは威張ってるだけのイヤな奴なのが定番ですが、マスラニ社長は一味ちがいます。
「ヘリコプター?操縦は誰が?」
というクレアのセリフにかぶせるように自ら操縦桿を握るマスラニ社長の勇ましくも楽しげな表情での
『君たち、実戦の経験はあるか!?』
おいおい社長カッコいいじゃねえか!
応援したくなってしまう憎めないキャラでした。
◼︎秘書のザラ
衝撃の最期について「ヒドイ」「あれはない」という意見をたまに見ますが、個人的には最高でしたね。
悪人だけがひどい目にあうっていうのは、溜飲は下がるかもしれないけれど予定調和感が増して緊迫感を失うリスクがあります。
恐竜は人間にはコントロールできないからこそ恐ろしく、観客も手に汗握るのです。
なんの罪もない人が理不尽な扱いを受けるシーンも恐竜映画の醍醐味だと思います。
メイキング映像でもスタッフが
『シリーズ史上に残る死亡シーンだ』
って言ってましたが完全に同意です。
◼︎脇キャラたち
・管理室のオタクの彼 → いいアクセント
・序盤でラプトルの檻に落下する彼 → 終盤コイツが凛々しい表情でラプトル解放ボタン押すの最高
・ジミーファロン → ジャイロスフィアの紹介ムービーで登場。ニヤッとしてしまう
・グレイたちの両親 → ラストで息子たちを迎えにきたお母さんの演技最高。
妹クレアを見つけて無事でよかったと抱き寄せるのも素敵
【3】演出/表現について
細かい演出、フリや伏線もよくできているなと感じます。
◼︎恐竜との共存
これは続編の『炎の王国』を見てから感じるようになったのですが、
新シリーズ(おそらく3部作)のテーマは
「人間と恐竜は共存できるのか?」
だと思います。
旧3部作では、人間は恐竜から逃げるだけの関係でしたが、新シリーズはそうではなく、時に共闘し、時に救出し、恐竜と人間の共存を描いています。
ラプトルという旧シリーズの恐怖の象徴を手なずけるべく調教するシーンで主人公オーウェンを登場させたことからも、新シリーズのテーマが伝わってきます。
簡単にはいかないけれど、彼なら、オーウェンならそれができるはず。
本作のラプトルたちなら、もしかしたら人間と共存してくれるかも。
そんな希望を感じさせられる幕開けです。
◼︎キャラクターの名前紹介
・株主接待前の独り言で「アイアム クレア」自分で言う。
・ラプトル四姉妹の名を、餌付けのシーンによって餌をあげるオーウェンの姿を描写しながら一頭ずつ紹介。
・オーウェン・グレイディのフルネームを、クレアが最初よそよそしく苗字で呼んだ上で突っ込まれてファーストネームで呼び直すという方法で、2人の関係のぎこちなさを描きながら彼の名前を観客に印象付けている。
「彼は◯◯」のような劇中でも誰かに紹介するセリフで紹介すると「紹介的なセリフだな」とすぐにわかって冷めてしまいます。
本作ではここがいちいちうまくできてる。
◼︎場所の見せ方
終盤に恐竜たちが大暴れする場所の大半が、映画の序盤では楽しくて平和なパーク内の景色としてモレなく登場しています。
2回目観るときに、
「あー!この広場はプテラノドンでパニックになる場所!」
「この土産物屋は襲われて隠れる場所!」
「このホールはラプトルから逃げる場所!」
って感じで、終盤のパニックを思い出しながら平和な景色を見ることができて楽しさ倍増。
◼︎序盤の平和ボケ感あふれるジュラシックワールド
序盤のあまりにも平和すぎるパークの光景が、終盤の展開の興奮を際立たせる効果を演出していて最高です。実在のテーマパークにありがちな要素を細かい部分まで徹底的に作り込んでいて本当に楽しい。
・おなじみのゲートをくぐるモノレール
・トリケラトプスふれあい広場
・エントランス付近のワールドバザール感
・お散歩的に引いて歩く恐竜のバルーン
・ウォルトディズニー像的なハモンド像
・ジャイロスフィア受付バイトくんのやる気なさすぎ具合好き
◼︎捕獲班のセンサー
序盤でインドミナスレックス捕獲作戦に出動した捕獲班チーム。
案の定彼らは次々と殺されることになるのですが、彼らが1人また1人と殺されていくのを
「ピーーーッ」っていう心電図的なシステムで表現した演出好き。
食いちぎられたわけでなく尻尾で吹き飛ばされたりした人も
「この人はコレで死亡しました」ってきちんと示してくれる親切設計です。テンポもよい。
最初に死亡したアジア人は「HAMADA」って書いてたから日本人設定なのかも。
◼︎フリ
ジャイロスフィアの性能紹介ビデオでジミーファロンが
「弾丸も通しません。絶対安全」
的なことを言っておいて、インドミナスレックスの爪で一撃で穴開くの最高。
このシリーズの
「万全のセキュリティなので安全」的なセリフは、もうフリにしか聞こえないですね。
◼︎平和と恐怖のギャップ
終盤でラプトルから逃げ、クレアらがイノベーションセンターへ戻ってきたとき、
めちゃくちゃに破壊された景色の中で淡々と流れる
「ジュラシックワールドをお楽しみいただけましたか?」的な園内アナウンスがシュール。
ここでアナウンスが「次のモササウルスの餌付けは〜」ってチラッとしゃべっているのは最後の伏線ですね。
◼︎翼竜園解放の絶望感
ジュラシックパーク3を観ているファンなら、あの数のプテラノドンが一斉に解き放たれることの絶望感は瞬時に察してしまいます。
過去作を観客が知っていることを利用している演出はこれ以外にも多い。
【4】4DXとの相性について
今回、『炎の王国』公開直前ということで上映されていた4DXでひさびさに観賞。
4Dとの相性は抜群でした。
こんな楽しい体験が500円でできるなんてユナイテッドシネマさん最高!
こういうリバイバル上映、もっともっと盛んになってほしいです。
正直言って今まで4Dはあまり好きではなかったのですが、この作品は4DXとあまりにも相性が良すぎて「4Dっていいじゃん!」となってしまい、翌週はハンソロを4DXで観に行ってしまいました。
◼︎大画面を見渡すカット最高
4DXって基本的には、主人公たちが車などに乗っているシーンで威力を発揮するのですが、
本作では新しい魅力を発見。それは、空撮カメラが大画面を映すシーンです。
・子供たちが来園し、ジュラシックワールドの全景が映し出されるカット
・草食竜たちが大量に登場するシーンでの広大な草原のカット
・プテラノドンたちが続々と羽ばたいていくカット
etc
スクリーン全体に広大な場所が映し出されて、空撮?カメラがぐわーーーっと景色を映し出す系のシーンがくるたびに、椅子がゆっくりとぐわーーっと前傾になっていくんです。
まるで空撮カメラのついたパラグライダーで飛んでいるかのよう。
激しく振動しているわけでもないのに、たまらない幸福感が得られます。
◼︎ヘリのシーン
マスラニ社長の操縦するヘリコプターで飛ぶシーンが2回ありますが、ココが最高。
もう本当にヘリに乗ってるんだあ!ってくらいの臨場感。
◼︎モササウルスショーのシーン
4DXって水がかかるシーンが苦手。特に4DX3Dだと、3Dメガネに水滴がつくのが困る。
「雨のシーンだからってここまで濡らす必要なくない?」とか思ってしまうことも多い。
でも、今回は4DX2Dだったのでメガネはなし。
そして、イルカショーのように登場したモササウルスによって劇中の観客たちに水がザバーってかかるシーン。
もうね、やりすぎなくらい水が吹き出してきました。
これが最高。劇中の観客たちと自分が一体化できるんですよ。これこそ本来の4Dの使い方!
映画が、観るものじゃなく、体験するものになってる。
あの瞬間、自分はたしかにモササウルスショーの観覧席にいたんですよ。
「お兄ちゃん!見た?」ってはしゃぐグレイくんとハイタッチしたい気分。
◼︎バイクのシーン
オーウェンがバイクでラプトルと疾走するシーン、もう言うまでもなく最高オブ最高です。
◼︎恐竜の足音
その他、インドミナス/Tレックス/アンキロサウルスらがドスンドスンと足音鳴らすシーンももれなく最高。
【5】恐竜たちについて
・ラプトル → ヒーロー化。ラストで駆けつけるブルーのシーンは感涙モノ
・Tレックス → 永遠のヒーロー✨
・モササウルス → 本作のMVPかも。
・インドミナスレックス → 好きにはなれないが、倒すべき敵、という物語的な役割は十分に果たしてくれた。
・アンキロサウルス → なんかカッコよかった。
・草食竜たち → パニック満載の中、癒しのシーンを提供してくれるのはいつも草食竜たち。
・翼竜たち → 最悪の災厄。上空から襲いかかるシーンは前作に続き最高
【6】減点要素
少し気になった点をいくつか。
◼︎ギャグが若干スベっている
クレア『4歳の子供が「アーケオルニトミムス」と発音できる?』
→「君が言えてるのに?」
唐突なキスを甥っ子たちに目撃されてからの
→ 「あれ誰?」『同僚よ』
オタク技術官の彼「誰かが残らなきゃ」と決めゼリフ
→からの「ダメ。彼氏いるから」
全部もうちょっと面白いつもりで入れたんだろうけど大してみんな笑ってなかった気がする。
◼︎展開のご都合主義感
インドミナスレックスが脱走しただけなら、最初から全力で退治にかかればたぶんここまで大惨事にならなかったと思うんですよね。
脱走したと早合点して中に入る/閉まりかけの扉をすり抜けたのではなくほぼほぼ体当たりで破壊してるからようするに設備がショボい/殺さず捕獲しようとして逃す/極め付けは翼竜園破壊
まあヒドイです。
とはいえ、人間サイドがやらかして → パニック
を、無能だと怒るのでなく、お約束として爆笑するのが正しい見方だとは思います。
◼︎スコア
★4.8で!
めちゃくちゃ楽しい映画ですが、わずかな減点要素あるので少しだけ下げておきます。