shishiraizou

徳川セックス禁止令 色情大名のshishiraizouのレビュー・感想・評価

-
池玲子のセンセーショナルなデビューを成功させ、半ばなりゆきで始まった東映ポルノ路線も、『温泉みみず芸者』『女番長ブルース 牝蜂の逆襲』『現代ポルノ伝 先天性淫婦』『女番長ブルース 牝蜂の挑戦』と天尾Pと鈴木則文のタッグで4連打され安定してきたが、路線のマンネリ防止のため鈴木はとりあえず5作目でフィナーレと。〈それまでの労に報いる意味で、()どんな条件でものむから〉と鈴木則文の自由に撮ってよいという提案が会社側からあった。
鈴木がサンドラ・ジュリアン×池玲子による時代劇艶笑喜劇を希望すると、天尾がセックス禁止令のアイデアを投じてきた。
その案が採用され、掛札との脚本執筆も順調に進行するなか、池玲子がヌード拒否・音楽事務所に所属というニュースが入り、主役の清姫の座が空いてしまう。
清姫役に鈴木は渡辺やよいを推すが、掛札と天尾は『温泉みみず芸者』で池と同時デビューさせていた杉本美樹のこの路線での「物語」を採った。

ポワポポ~ポワポポ~と楽しい音楽で開幕、田中小実昌の徳川家斉が登場し、居並ぶ女を唇ペロペロなめなめ品定めするカットからもう文句なく面白い。
家斉の娘(杉本美樹)と、彼女を嫁にもらう唐津の藩主(名和広)。おぼこい二人が、営みへの偏見と嫌悪にとらわれたまま、乳首なめられて「無礼者~」と叫ぶ等々、時代劇らしい大仰なセリフでリアクションするのがいちいち愉しく、エロスというより可愛らしい。藩主のおそばについて、汗だくで女の扱いを知ったふうに指南する殿山泰司、口がちゃんと回っていずにたどたどしいのも、内容が内容だけに滑稽味を増して愛らしい。キツイ顔だちの杉本美樹ですが、その無表情さも姫の頑なさとその後のギャップとなっていて良いんじゃないか。腕にツベルクリンの跡らしきものがあるのも愛嬌。
サンドラのパートはシリアスがやや強くてトーンも様々で乱れがちですが、“演技しがいのある”場面を色々と揃えてあげてサンドラの満足度を上げているように思えて、その作り手の優しさがこれまた可愛らしい。サンドラは〈仏語翻訳を読み、大乗気で一日も早く京都に入り気持を作りたいと言〉い、撮影にさいして〈大張りきりで熱演〉したと鈴木則文が書いているのを読んで、サンドラ良かったねえと嬉しくなる。

ラストは禁止令が廃止され人々は大喜び、野原で恥ずかしそうに隣りに座って花を摘む少年少女の姿に、すなおに純真を見る。自由讃歌の大まじめなスローガンで終幕、このストレートさが不思議な感覚。
shishiraizou

shishiraizou