ちろる

2つ目の窓のちろるのレビュー・感想・評価

2つ目の窓(2014年製作の映画)
4.3
奄美の珊瑚の美しい海や、ユタ神、八月踊りなどの独特な文化の中に描かれながらも、シンプルで純粋な愛がまっすぐと伝わってじわじわと体に染み込んで、じんわりと海のエネルギーを感じながら2人が海中を泳ぐパッケージのシーンと繋がってくる。

ユタ神の母に生まれ、奄美の自然に抱かれるように育った杏子と、東京から越してきた界人の「海」への想いが全く異なっているように、母親に抱く想いも全く違う。
海はきっと「母」の存在と似ていて、母への想いも変化させた時に初めて、海が得体の知れない存在から本来あるべき温かい存在と変わっていくのだろう。

制服のまま珊瑚の海に潜る杏子の姿や、縁側に寝そべって家族でマングローブの木を見つめる杏子の儚いけど深い幸せの形が涙が出るほど好きだった。

村上虹郎さんのナイーブで純朴な界人と、吉永純さんの芯の強い杏子の2人の交わりが眩しくて、特に2人で自転車乗って海辺を走るシーンは本当に美しい。
その他杉本哲太さん、松田美由紀さんら大人のベテラン俳優さんたちは勿論いうまでもないけど、釣り老人の仙人みたいな常田富士男さんの存在感やあの独特な語り口のおかげで、私も彼らと一緒にまるで神に守られた奄美の島の一員になったような不思議な感覚を抱いてしまう。
沖縄とはまた違う、マングローブの木に囲まれた神秘的な奄美の自然と、それらに優しく抱かれた界人と杏子を羨ましく思った。

冒頭のヤギの屠殺シーンで以前、一度観るのをリタイアしたけれど、今回は何故だかすんなりと観進める事ができた。
どこか切なくて、人間の生と死の静かな営みをゆっくり噛みしめるようなストーリーなので、観る側のタイミングも選ぶ、非常に繊細な作品だった。
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