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おやすみなさいを言いたくてのkimaguremovieのレビュー・感想・評価

5.0
コインには表と裏があります。使命があり、能力がある者は、突き動かされるようにタスクを果たします。お金ではありません、一方、何らかの犠牲は伴います。
一流の報道写真家レベッカにとって、穏やかな自宅とのバランスはどうでしょう。両立出来ていたと思っていたレベッカ。大きな事故で両立困難との答えが表面化してしまいました。
宿命を捨て家族と共に生きようとしたレベッカ。しかしやはり無理でした。レベッカは宿命を背負う、選ばれた人とも言えます。そうでなければケニアであの行動はできません。これぞプロ。その姿は凛々し過ぎます。
その行動は家族を裏切るもの。娘に、いつかわかる日が来るはずだと理解を求めるレベッカ。本当にそうだ。おとなになればわかるはず。しかし家族には分かるわけありません。『いつ終わるの? 』に、『ママが死ぬ時』と答えた娘ステフ。その娘が、レベッカにレンズを向けて切る連続シャッターの音。心を切り裂くシャッター音。それは100回も続きました。
プロは三たび戦場へ向かいました。宿命は家族の力をもってしても変えられない。それで直ちに世界が変わらなくても、一つずつ1人ずつ変わればいいと、撮り続けるのでしょう。引き継ぐものでも、他人に任せるものでもない。
しかし。なんというラストシーンでしょう。宿命が尽きたかのようなラスト。私も、この気持ちがへし折られました。何という虚脱感、喪失感…。
抜け殻となったレベッカ。元々は普通におやすみなさい、と毎晩言いたいだけだったのに。それでもきっと思慮深い娘さん、ステフはわかってくれるはずです。もしかしたら、すでにステフは自らに宿命が宿っている事に気付いているのでは? などと感じました。

映像の衝撃と繊細さもストーリーに引き込ませる要因になっていました。非常に重く非常に深い作品。コインの裏表の葛藤は息苦しいと思いますのでお勧めはしませんが、私にとっては最も秀逸な作品のひとつ。