kuniko

おやすみなさいを言いたくてのkunikoのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

紛争地帯で、自爆テロの様子を非情にシャッターを切る女主人公。戦場ジャーナリストというのは、自分の命を顧みず、目の前で殺人行為が行われていようと、カメラを向け続ける冷徹な面がないとできない。悲しみにくれる人や逃げまどう人、今死に行く人、置き去りにされた死体にレンズを向ける。彼女には、アイルランドに家族があって、夫とまだ若い(小さい)娘がふたりいる。生死をさまよう大怪我の後、帰省すると、家族はそれぞれに不満を抱えており、そこで家族を選ぶのか、自分の使命を選ぶのかを迫られる。しかし、ここで彼女の本質が現れてしまう出来事が起きる。彼女の娘が安全と言われていたキャンプに同行することになるのだが、そのキャンプは戦闘に巻き込まれる。その時主人公は娘をほかの人に託し、自分だけ戦場へ写真を撮りに戻っていってしまった。わたしは恐ろしいな、自分の子どもを第一に守らないんだ、違うんだなと思った。主人公はどんどん突き進み、戦車や銃で襲われた集落をカメラで追う姿は、狂気の沙汰に見えた。よき家庭人であろうと努力をするが、夫からは死臭がすると言われ、娘は使命にまい進する母親に複雑な気持ちを吐露する。その後、彼女はまた戦場へ戻る。冒頭と同じく、自爆テロの儀式のようなものが行われ、体に爆弾をたくさん巻きつけていく若い女性。その女性を見て、彼女は前のようにシャッターを切れなくなる。状況の異常さを感じ、恐れ、立ちすくむ。そのメンタリティは、以前のようにタフではないかもしれない。戦場写真家であるための支柱がくずれさり、はかない存在になったかもしれない。しかし今まで麻痺していた感覚が戻った様子は、すごい写真を撮ることに匹敵する人間にとって重要なことに思えた。その後の主人公がどういう道を選ぶのか。娘は将来、どのような生き方を選ぶか。気になる。
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