odyss

太秦ライムライトのodyssのレビュー・感想・評価

太秦ライムライト(2013年製作の映画)
4.0
【素直な気持ちで】

時代劇の斬られ役が主人公、という映画。実際に斬られ役で役者人生を過ごしてきた福本清三氏がこの役を演じています。

時代の変遷のなかで、時代劇も数が減り、斬られ役の居場所もなくなっていく。そんな状況が、脇役で一生を通した男の姿を通して切々と描かれています。

また、その主人公とは対照的な美少女(山本千尋)が登場し、最初は映画界に足を踏み入れようとする新人として、やがては脚光を浴びて時代劇映画の主役を演じる女優として、主人公と関わりを持つのです。この辺はいかにもフィクションめいていますけれど、いい意味でのフィクションで、これによって来る者と去る者の対比があざやかになるばかりではなく、二人の協力関係を通して伝統の継承や、時代劇を愛する者同士の結びつきが説得的になっていると言えるでしょう。

福本氏が老いの持つ年輪とせつなさを見事に表現。山本千尋さんは、もともと太極拳の選手なのだそうですが、きりりとした美少女ぶりがひときわ印象的です。今後も映画界で活躍して欲しいもの。

筋書きにはありきたりだったりご都合主義だったりする部分もあります。でも、時代劇とはもともとワンパターンでご都合主義なもの。だからこそ大衆の人気を失わずに明治維新後150年をへた今日まで生き延びてきたのです。その意味で、本作品のいかにも大衆娯楽めいた筋書きの展開も、決して咎めるべき筋合いのものではありません。素直な気持ちで鑑賞してこそ楽しめる映画でしょう。
odyss

odyss