青山

プールサイド・デイズの青山のレビュー・感想・評価

プールサイド・デイズ(2013年製作の映画)
4.2

14歳の内気な少年・ダンカンは、母親の新しい恋人のトレントの「この夏は俺の家族と別荘で過ごすぞ」という言葉で、トレントファミリーとのバカンスに強制連行されます。しかしトレントもトレントファミリーもクソ人間ばかりでまいっちんぐ。居心地の悪さに別荘から出てふらふら外を歩いていたダンカンは、カフェでオーウェンというめちゃくちゃな男に出会い......。


一夏のボーイ・ミーツ・怪しいおっさん&ボーイ・ミーツ・ガールを描いた陰キャ系青春コメディです。

陰キャラという言葉がいつからあったのかは定かではありませんが、少なくとも私が中学生の頃、つまりは10年前くらいには既にありました。おそらくその辺の時期に広く流布した新語だったのではないかと思います。
とまれ、そんな言葉が生まれてしまったがために、世のボーイズ&ガールズの個性というものは陰陽二元論に分けられ、それは即ち善悪二元論にすり替わって陰キャラは悪だから下に見ていいというルールが世界に蔓延ることと相成ったわけでございます。
かく言う私もご多分にもれず、キモい陰キャラとしての学生生活を送ってきたわけですが、この映画の主人公のダンカンもまたそんな陰キャラの1人なのでありました。

冒頭、母親の彼氏のトレントに「お前に10点満点で点数をつけるなら3点だ」と酷いことを言われ、トレントファミリーの女の子からは居るだけで「なにあれキモ」という扱いを受けるダンカンを見ていると往時の自分を見るようでいたたまれない気持ちになります。あれ、この映画コメディって書いてあるけど、全然笑えないんですケド......という。

しかし、そんな状況下でもやはり彼も男の子で、隣家の可愛い女の子に猛烈アタックします。
「あ、あ、あの、こ、こ、今年はあ、あ、暑いな、な、夏になりそうだねでゅふふ」
あっちゃーっ!やっちゃった......。
そんなこんなで何もかもうまくいかない夏。ふらふらしてると変な大人に出会います。
そう、彼こそがサム・ロックウェル演じる変人オーウェン。彼と出会うことで、変わっていくダンカンの成長と、彼のキャラクター自体が単身でコメディなのが本作の最大の見所なのです!

なんせ私のフィクション開眼が映画の「アヒルと鴨のコインロッカー」だったので、こういう若い人がおっさん?お兄さん?くらいのヤバい人に出会うというタイプのお話が好きなんですよね。
今作のオーウェンという男も、とんでもなくテキトーな変人のようでいて、ちゃんと彼なりに芯の通った人生哲学を感じさせるのでカッコいいんですよね。わざと道化を演じている感じ......というか、アホなのも本当かもしれないけどその裏に底知れないものを感じさせるというか......とにかく魅力的なキャラクターなのですよ。はい。

そんなオーウェンさんとその仲間たちとプールのバイトとして過ごすうち、ダンカンくんもだんだんとこのプールサイドデイズを楽しむようになっていきます。プールに来るパリピたちは真のパリピだから陰キャラ陽キャラという陰湿な区別もせずみんな友達みたいな感じ。良いですね。
相変わらずトレントファミリーはクソだけど、クソに見下されて泣き寝入りする彼ではなくなっていく、その一夏の大きな成長が素敵です。
そして、最後の最後までトレちゃんはクソだけど、それにどう向き合うか......というところの答えがきちんと出た結末は切なくも静かな爽快感がありました。

「夏」という言葉に弱い根暗陰キャの方はぜひ見て欲しい作品です。
青山

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