苦さもあったはずなのに、振り返るとキラキラ輝いていたあの夏休みの景色を思い出す。
夏っぽい映画が観たいんだよねとチェックしておいた本作。
蝉の煩い鳴き声を勝手に音声に追加したくなるような夏の陽射しと、思春期の葛藤や鬱屈が眩しい。
学生時代の夏休みにだけ確かに持っていた、あのどこにも所属がなくて、宙ぶらりんで、居場所が定まらない浮草みたいな感覚を思い出す。
どこにでも行けそうで、でもどこかに勝手に行くほどの自由や経済力はなくて、友達と電車で街に行くのが何よりも楽しかった。
そんな懐かしくも愛しい記憶を喚起される甘酸っぱい映画だったんだけど、夏休みに変化をしたり成長したりするのは子供だけじゃないんだよな、なんてことも感じさせてくれる映画だった。
出会いは、人を少しだけ変える。
夏休みはいくつになってもそんな無責任なことを期待して良いのかもしれない。