イペー

やさしい本泥棒のイペーのレビュー・感想・評価

やさしい本泥棒(2013年製作の映画)
3.7
ペンはナチスより強し!

ナチス政権下のドイツ。里子に出された少女リーゼルの、本や人との出会いを通じて紡がれる戦争ドラマ。

主人公のリーゼルは読み書きが出来ません。しかし周囲の人々の助けを借り、物語や言葉に触れ、 愛情や人間としての強さを獲得してゆく。
その過程を一つ一つ、エピソードを丹念に積み上げる形で描いています。

明るい空の下でのシーンと、薄暗い地下室や防空壕でのシーンとの対比が鮮やかです。地下室に匿われたユダヤ人の青年。
リーゼルが彼に学び、彼と通じ合って成長を遂げる姿には自然で無理がない。
家族揃っての地下室での雪合戦、その後のささやかなクリスマスには心打たれました。

ジェフリー・ラッシュ、エミリー・ワトソンなどベテランの俳優陣の中で、運命に翻弄されつつも、真っ直ぐ生き抜く少女を好演したソフィー・ネリッセは素晴らしかった。…あと可愛かった。いや、変な意味ではありませんよ。

多くの方が指摘されてるように、言葉そのものが主題となる作品で、ドイツ人が英語で話し、英語を学ぶという違和感。
…うーん、確かにちょっと気になります。
まあ、そもそもメルヘンチックなお話ですから、リアリティはあまり無い。

物語の中心には"ナチスと戦争"があります。悲劇の気配は冒頭から忍び寄る。既に歴史によって記述された結末。

リーゼルは物語の力で、現実の厳しさを克服します。死神が書き終えたエンディングを書き換え、また新たな自分だけの物語を紡いでゆく。
その筆致は優しさと力強さにあふれているに違いない、そう思います。

本、大好きなんです。映画も大好きです。
なので本にまつわる映画が嫌いな訳がない。決してリーゼルが可愛いから、という理由で評価が揺らぐものではない。
誤解を生まぬよう、改めて申し上げておきます…。