イチロヲ

我が家のおバカで愛しいアニキのイチロヲのレビュー・感想・評価

3.7
バカ正直を地でいく青年が、親戚の家庭内に介入しては、そのドロドロとした人間関係の内幕を無自覚的に暴いていく。「キリストのような聖人君子が現代社会に現れたらどうなるか?」ということを題材にしているコメディ映画。ポール・ラッドの風貌がもろにイエス様。

主人公の人間そのものが「善きことの概念」であるため、自己啓発テラピーがまったく効かないという展開が最高に笑える。

主人公は、その場で言って良いことと悪いことの判断(空気読み)ができないし、指示された仕事を上司の望み通りにすることすらできない。聖人君子と精神病者は紙一重の存在として描かれている。

はじめは主人公が奇人変人に見えるのだけど、物語が展開するうちに周囲の家族たちのほうが狂っていることに気付かされる。

家族の人々は「不幸」の感情の捌け口を一斉に主人公へと向けて、ジーザスよろしく生け贄に晒しあげてしまう。そういう、倒錯的な手法の盛り込み方がとても巧い。

小品だけど、よく練りこまれているシナリオ。ラストもスッキリとした気分にさせられる。