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007 スペクターのmmas02のネタバレレビュー・内容・結末

007 スペクター(2015年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

先行で鑑賞。やっとこの日が来たよ!

オープニングのあり得ないカメラワークによる長回しで既に興奮度マックス。これは期待できるぞ!(後で調べると実際はCGで繋いでることが判明)。

ほどなくしてテーマ曲が流れる。サム・スミスの女性のような美声に鳥肌立ちまくり。

そこからアクションシーンの嵐。

時折出てくる前3作ネタに、にんまり(ミスター・ホワイトはしっかり生きてた)。

ダニエル・クレイグならではの肉弾戦も、本作ではデビッド・バウティスタが演じるミスター・ヒンクスのお陰で益々ヒートアップ。

そして、オーベルハウザーが猫を抱き、片目に傷を付けたらブロフェルドの出来上がり(私の頭にはDr.イーブルが浮かぶ)。

クリストフ・ヴァルツが演じる悪役は静かで平然としてて緊張感を生む。”イングロリアス・バスターズ”の時も思ったけど、この人やっぱ怖い。起爆ボタン押す前に「急所のツボは押さえてる」って言いながら笑うシーンは狂気を感じた。

・・・と、ここまでは良かった。


でもこれ以降は、本作が普通の映画に成り下がった感想です。

最初に「あれれ?」と首を捻ったのがスペクターの組織会議シーン。ここでメンバーから報告される内容がとってもチープ。そうこうしてるとオーベルハウザー登場。静寂の中、部下に何やら耳打ち。その後もしつこく耳打ち。でも突然マイクで喋り出す。え?喋りたいの?喋りたくないの?な展開にコメディ映画の片鱗を見た。

次に、ボンドとオーベルハウザーの因縁性が薄い。「お父さん取られた」って理由、小学生か!
オーベルハウザーがなぜ組織を作ったかの過程が描かれていない上に「やっと会えた」だの「ヴェスパーとMの死は俺が裏から仕組んだ」だのと、ボンド個人への逆恨み要素が強いのなんの。このボンドとの個人的過ぎるやり取りは周囲の部下にも筒抜けな訳だが、本来ならばこんな調子では部下はついてこない。
百歩譲ってオーベルハウザーにカリスマ性があるとした場合、今度は彼を固める護衛の手薄さが気になってくる。彼が直接動くシーンに兵士の数があまりに少ない。いざと言う時に使えるコマも少ないのか、とさらに大物感がしぼんだ。
ついでに言えば、ボンドの追い詰め方にもいやらしさと残忍さが足りない。

”スカイフォール”では新生Mの誕生に胸躍らせたが、本作ではジュディ・デンチに死して尚おいしい所持ってかれてるし、ボンドは言うこと聞かないし(これは前任者からそーだったか)、Qとマネーペニーも言うこと聞かないし、終盤まで完全にCに出し抜かれてたし、上司の威厳が保てずに何だか”Moron”気味。

”カジノ・ロワイヤル”からボンドの成長を見守ってきた者としては、ラストも全然納得いかない。ヴェスパーの死をもって本気の愛は捨てたと思ってたのに、まさか最後は一人の女性に落ち着くなんて!

そして最も残念だったのが、本作をもって完全に原点回帰しちゃったところ。
私は”ゴールデン・アイ”以降の007しか観てませんが、ボンドがこっち向いてバキューンってするお馴染みのガンバレル・シークエンスが冒頭にきたり、ボンドとQが新作ガジェットを前にしてほんわかなやり取りをしたり、ピンチの中にもコメディ要素がてんこ盛りだったりな所がまんまピアース・ブロスナン版007だった。
これを良しとし、満足・歓喜する人は多いのだろう。
でも私は、先代までの過去作で築いた007をぶち壊してシリアス路線を貫いてきたダニエル・クレイグの007に期待していた。
”スカイフォール”のようにほんのちょっとのアクセントとして過去作を思い起こさせるシーンを入れるのは良いが、ここまで壮大なオマージュになるとダニエル・クレイグ演じるボンドが軽くなってしまう(これまでの苦悩を全く感じさせない余裕は何だろう?ヴェスパー尋問記録テープを前に彼は何を思ったのか?)。
サム・メンデス監督が古き良き過去作に愛を持っていることは理解するが、それにしても本作は往年のファンを意識し過ぎていて媚びているようにさえ感じた。
とてもじゃないが、”スカイフォール”と同じ監督が作ったとは思えない。

でもまぁ、ブロフェルドがこのまま大人しく捕まってる訳はなく、次作でドン底に突き落とされるボンドを楽しみに待ってますよ!
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