COZY922

007 スペクターのCOZY922のレビュー・感想・評価

007 スペクター(2015年製作の映画)
4.0
スカイフォールで生い立ちに立ち返り原点を見つめ、自分の闇部分の写し鏡のようなシルヴァとの対峙を通して英国と自らのミッションへの揺るぎない忠誠心を再認識したボンドが、向かう相手スペクター。ダニエルクレイグ版の前3作の集大成にして、スペクターの首領と相まみえる本作は007を構成してきた要素を編纂するように組み入れ、スカイフォールと共に1つの到達点と言えるだろう。

最高に良かったのが、オープニング・シーケンス。メキシコの”死者の日”の祭りで ラテンの異国情緒と熱量に惹き込まれ、群衆の上でのヘリコプターでの格闘に釘付けになり、テンションが上がりまくって迎えるタイトル・シーケンス。 スペクターを象徴するタコ。その足が呪縛のように絡まる過去とこれから。甘美でしなやかな強さに満ちたサム・スミスの歌声は深い奥行きがあり、どこかミステリアスな空気もはらんでいて素晴らしいとしか言いようのない出来だった。

アクションの迫力も4作の中では一番だと思う。冒頭のヘリコプター、列車での格闘、終盤の針での拷問、砂漠の中での爆破など緊迫感溢れるシーンが次々に繰り出されスパイアクションとしての満足度は高かったと言える。

内容面で感じたのは ボンドの ”吹っ切れた感”。ダニエルボンドならではの人間臭さを変わらず漂わせつつも、前作で自分の立ち位置を確認し 母のようなMを見送り 気持ちの整理がついたのか、これまでよりはサバサバした印象。スペクターの首領が何者なのかを知った時も、その事実も含めて冷静かつ俯瞰的な視点を保っているように見えた。

ただ、このスペクターの首領の正体とボンドへの感情だが、正直なところ自分はこれがあまりしっくり来ず、強引な後付け感や違和感が否めなかった。組織の企みの世界規模のスケールと その中核の存在であるはずの人間の意識の小物感にひどくギャップを感じてしまった。クリストフ・ヴァルツは良かったけれど、スペクターの元締めとしての巨悪感がもっと欲しかった。心理戦が好きな自分としてはその点もやや物足りなさを感じた。

とはいえ、全体としては集大成に相応しい作品だと思う。硬派な顔にエロスが共存するダニエルクレイグもカッコいい。あのラストからの次作は果たしてどうなるのか? 早くも楽しみでならない。