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007 スペクターのJIZEのレビュー・感想・評価

007 スペクター(2015年製作の映画)
4.2
過去三部作の集大成とも称せるスカイフォールで佳境を迎えたボンド映画の続編第4弾!!監視後は白昼夢な多幸感を浴び妖艶な148分間に浸り続け感服..まず監督サム・メンデス続投に拍手。予算3億ドルな未曾有の制作費を投じた価値が映像にあった。原題『Spectre』は"幽霊"を指し利益や権利を得る為にあらゆる政府機関,多国籍企業,犯罪組織に潜む実態がない象徴と言える存在。戦争で軍需拡大を蔓延る産業や情報漏洩を促す産業など現代社会の風刺に直結し切実な問題と取れた。まずOP銃口に狙われたボンドが振り向き様に拳銃を撃つ往年"ガンバレル"描写。ちなみに前作ではボンドが真にスパイへと成長を遂げラストに配置される構造であったが本作では堂々とOPに配置された事で定義(再象徴)が完了した宣言と取れる。先にシリーズ経緯をザッと語ります。まず前作『007 スカイフォール(2014年)』で"優雅な6代目ボンド像"の再定義が完了し改め再象徴化されたボンド像で原点回帰を果たす本作。また,前者と本作でアプローチの対極とも評せる違いを実感した。要は前作『007 スカイフォール』ではある地点と地点が数珠繋ぎのよう地理的に結ばれドンドン展開し次々と場所が移動し疾走感が常に止まぬスリリングで神話的なボンド自身の"ルーツ巡りの旅"や"地獄めぐり"なアプローチを掲げた前作。で本作では埃まみれな闇雲で異様な雰囲気を併せ持ち逆に観客が放り込まれる風情のアプローチを果たす。

また本作のアバンタイトルで核的な象徴である"死者の祝福"がメキシコを舞台に開幕早々でカニバリズムな異国の情緒を通じ完全再現で巨大なガイコツ,山車,仮装の数々を通じ高揚感をドライブさせ描かれ鮮やかな生命が溢れ賑わう光景は過去に消え去った者に捧ぐ弔いの暗喩とすら伺える。テーマ性と大々的に繋がる長回しで追尾した導入部の世界観が徐々に危険度を帯び闇に閉ざされていく雰囲気の配し方はクラシカル感込め前作に引き続き脱帽する。

概要。ダニエル・グレイヴが4度目のジェームズ・ボンド役を演じる『007』シリーズ第24弾。監督は前作『007 スカイフォール(2014年)』に引き続きサム・メンデスが続投。また共演陣等も続投を果たし本日(12/6)付けでサテライト・アワードの7部門に本作がノミネートされました。

私自身,元々『007』シリーズに対し前のめりになる程の熱狂派ではなく,6代目ダニエル・ボンドからジックリ作品を観出し過去作品の数あるオマージュを提言できない点も申し訳なく思う。そんなシリーズ初心者が提言するのもなんだが本作はシリーズファンほど唸り逆に知識が浅い者ほどどこかフワッとした余韻を受け及第点が置き難い作品に仕上がっていたように思えた。シリーズファンに捧ぐ過去作のオマージュ連発も勿論,ボンド映画の紋章があらゆる意味でシンボリズム化され娯楽的なカタルシスがありながら,複雑な不毛さ同時に美学や観念の不明瞭な透き通らない狂気を宿しまぁ全体的に良い意味で鈍重な原点回帰を果たす映画だったのかと思う。過去シリーズの異常な引用がボンド映画を新たなフェーズに移行させる構造的なギミックなのかもしれない。

アクション場面。開幕メキシコの死者の日で仮装した群衆の頭上をヘリが飛び交い何十回も旋回するオーバーアクトは前作の列車からボンドが誤り狙撃され堕ちる場面と同様に唸り序盤で秘密兵器でもある愛車アストンマーティンがジャガーとカーチェイスを展開し車両後部から火炎放射を発し完璧に軍用機と化す映像はハイテク感が滲み新鮮である。アルプス山中で雪上チェイスをすはり下りも位置関係を十分に取り凄まじい速度でばが展開してく爽快感も障害物が次々と破壊され直線的な画角で魅せるため緊迫感の間合いが最高。終盤も唯一敵の脆弱感を差し置けば無難に楽しめる映像であった。

人物面。まずベン・ウィショー演じる武器開発のQが前作と比べ大活躍を果たす点。今回は結構アクション面に特化した役回りを演じてました。逆にナオミ・ハリス演じるマネー・ペニーが単にアシスタント役で終始し確信と絡まない抑え気味な感じは前作に比べ1番残念な点。コレは脚本の練り不足ですかね..今回ボンドガール役のレア・セドゥ演じるマドレーヌもMr.ホワイトの娘とボンドに対し因縁な不信感を露わに距離感が縮まる感じはミステリアス度を倍増させ見事。ただ,列車戦闘後にアレに走る下りは唐突に思えた。。クリストフ・ヴァルツ演じるフランツの異常な策略を企て余裕な表情を魅せる宿敵感も個人的には抑え気味な噂1本が先行し戦力が伴わず脅威的な行動で魅せる狂気さが垣間見えなかったかな。情報を管理する施設で統括を図り首謀者であるダークサイドに満ちた舞台の闇感はガンガンに感じましたが。特に部下たちの異様な椅子に腰掛け全員が画面に釘付けな照準をズラし表情を画角内に映さない演出も。あともう1人のボンドガール役を演じたモニカ・ベルッチは記憶に残らなかった..役者陣の活かし方は過去作で死去したあの方を含め完全燃焼だった。

結局は次作の続編第25弾で6代目ダニエル・グレイグが続投を維持するか終幕もどちらとも取れる締め方だったので期待。最後の舞台を英国ロンドンに選んだ意図も6代目ボンドの終幕を示唆させ本作で見納めなのかなとも考えたり。いずれにしろエンドクレジット後に「James Bond will return」文字が再び記され今後の007プロジェクトに拍手が掛かります。年末映画としては来週公開の『スターウォーズ/フォースの覚醒(2015年)』とも双璧をなす映画。『スペクター(2015年)』は兄弟間も彷彿とさせジェームズ・ボンドの内面が過去3作より掘り下げられているので感情移入も容易く本作から逆順で観ても例外なく楽しめるボンドが隠す秘密と因縁を巡るお話ですのでシリーズ集大成な極限まで鍛錬され危険度を帯びる第4弾を劇場でお勧めです!!