ねこたす

007 スペクターのねこたすのレビュー・感想・評価

007 スペクター(2015年製作の映画)
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ついに見てきたぞ! 大団円!
この前に書いたクレイグシリーズ3作と合わせてこの感想を読んでもらえたら幸い。

初っ端から長回しをぶち込んでくる。メキシコの楽しそうなお祭りだなあとのんびりしていたら、ハッと気付く。曲もマッチさせていて、流れるような導入だ。

「ちょっと行ってくるわ~」な軽さでひょいひょいと屋根を伝っていき、まず一揉め。まさか予告のシーンがこんな冒頭だとは思わなかったよ。確かに、美味しいシーンは予告には出さないだろうけどさあ笑

そして定番の追いかけっこから、珍しい空中戦へ。若干長いなと感じたけれども、あれだけ大勢の上で戦われるとヒヤヒヤし緊張感が出てくる。

そしてお待ちかねのOP。やけに明るいのがポイント。そして、スペクターを象徴するあのマーク。まさかあの生物とかけているとは思わなかった。絡みつくのは、運命か、死の匂いか、それとも過去か。クレイグシリーズに登場した過去キャラの顔もうかがえる。さすがである。

前作で爆破された建物はそのままに、MI6は再編されようとする。おまけに、ボンドがまたやらかすものだからいい加減政府はお冠。いかにもキナ臭い"C"がまたいやらしい。

遺言通りに事を進めると、ローマの怪しい会合に行き合う。
この雰囲気がたまらないのだが、今回の悪役のすました感じがまた良い。
演じているのが誰か分かっているのに、ギリギリまで顔を隠されるものだからどんなニヤけ面しているのか気になってしょうがない。

そして流れるように転々と敵の影を追いかける。懐かしい敵役に出会い、その娘を託される。レア・セドゥがまた良い女っぷり。最初は心を閉ざしているが、父の真相を知るために行動を共にする。

それでも、つり橋効果よろしく惹かれあう二人。心の中では、あーセックスしちゃったよー。死んじゃうよーなことしか浮かばない。

北アフリカの邸宅は、慰めの報酬を思い出す。
いかにもディストピアを匂わせるPC感と従う人たち。
カジノ・ロワイヤルではお金、慰めの報酬では資源。そして"情報"。時代の流れがしっかりと反映されている。

また新しい拷問シーンが披露されるのだが、その中の会話から二人の関係が明らかになる。
それにしても、あの腕時計にあんな破壊力があるとは思わない。予想を遥かに上回る炎上に驚きを隠せない。ギネスに載るレベルってのは本当かい? しかし、ラストに相応しいと言えばその通りだ。

それでも話は終わらない。いかにもディストピアなシステムが動き出そうとしているのだ。ここでボンドガールが離れるのが印象的。どちらに転ぶか分からないドキドキがある。

そして解体されることが決まっているMI6へ。的に自分の顔。今まで死んでいった敵や女性たち。まるで煉獄のようだ。そして、今一度防弾ガラス越しの対面。
ありがちな撮影だが、この重なりそうで重ならない絶妙な配置にシビれる。

ラストの選択も感慨深い。
殺す権利の表裏。引き金を引くのは現場の人間だという会話が活きてくる。

ダニエル・クレイグの007の最期を締めくくるにふさわしい。ヴェスパ以来のボンド・ガールとの恋。
復讐の為に行動を共にする女性像。そして、母と息子ならぬ父と子の関係。
それぞれの3作を思わせるようである。
そして、タコのように伸びる触手が今までの映画の隅々に及んでいたことを知る。

「死者は死者ではない」などと意味深な台詞があるが、踊り食いされるように死んでいるか死んでいないか分からない。

MI6が完全に破壊され、生家もMも無くなった。
残るのは過去との決着のみであった。

なぜ殺し屋になったの? 他に選択肢は無かったの?と聞かれるが、こうするしかなかったとしか答えられないボンド。
しかし、ついに彼は自分の逃れられないような運命から脱却することができた。自ら選んだ選択で。

ボンドの新たな門出を祝おうではないか。あの助手席に座れる女性のなんたる幸せなことか。

確かにスカイフォールという傑作を生みだしてしまった後に、どんな作品を作っても辛いのは分かっていたことだ。
それでも、サム・メンデスも自らのシリーズに決着を付けた。

引導を渡された新しいボンドが、どのような作品を生み出すか。楽しみにしたい。