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007 スペクターのkuuのレビュー・感想・評価

007 スペクター(2015年製作の映画)
4.0
『007 スペクター』
原題Spectre.
映倫区分G.
製作年2015年。上映時間148分。

ダニエル・クレイグが4度目のジェームズ・ボンド役を演じる。
007シリーズ第24作。
前作『007 スカイフォール』に続きサム・メンデス監督がメガホンをとり、レイフ・ファインズ、ベン・ウィショー、ナオミ・ハリスら共演陣も続投。
新たなキャストとして、ボンドガールとなるモニカ・ベルッチ&レア・セドゥー、アンドリュー・スコット、デビッド・バウティスタ、クリストフ・ワルツらが参加。

『スカイフォール』で焼け残った写真を受け取ったボンドは、そこに隠された謎を追って単身メキシコ、ローマと渡っていく。
その過程で悪名高い犯罪者の美しい未亡人ルキア・スキアラと出会ったボンドは、悪の組織スペクターの存在を突き止めるが。。。

今作品のタイトル
S.P.E.C.T.R.E.
は、初期のジェームズ・ボンド映画に登場する
『Special Executive for Counterintelligence, Terrorism, Revenge, and Extortion』
(防諜、テロリズム、復讐、恐喝のための特別執行人)の略でっす。
ジェームズ・ボンドの生みの親であるイアン・フレミングは、当初、この頭文字をもう少し簡単に『the Special Executive for Terrorism, Revenge, and Extortion.』
(テロリズム、復讐、恐喝のための特別執行人)という意味にしていたそうです。

今作品『スペクター』と『スカイフォール』は、同じ製作陣と主演俳優が関わっているし、比較されることはほぼ避けられない。
せや、この2つの007作品は、1つの継続的なストーリーラインの中の別々の章としての役割を果たしているにもかかわらず、全く異なってるかな。
継続性をより明確にするための努力により、クレイグが主演するボンド映画は、ボンドシリーズの初期の段階とは異なる、より骨太な作品となってます。

今作品は、最新作をまだ見てませんし、あくまでも『スペクター』までの007シリーズ・トップ10に個人的に入る作品だと思います。
しかし、『スペクター』が『スカイフォール』を超えるとは思っていませ
んでした。

『スペクター』じゃ、ロケーションとその環境の映画的な広がりがこれまでになく素晴らしいものとなってましたし、メキシコシティでのシークエンスは、これまでの007映画のイントロダクションの中でも最も衝撃的でハラハラするモンやったし、小生はこのシークエンスを最高のボンドの(オープニングだけを含む)非常に特別なカテゴリーに入れたい思ってます。
本作品が『スカイフォール』と同等のものであるとすれば、両作品を見た後に思い浮かぶんは、やっぱりアクションシーンかな。
列車の中でクレイグとバウティスタが手に汗握る攻防を繰り広げる場面じゃ、2人とも目の前の相手を打ちのめそうとするリアルな決意が伝わってくるし、限りなく本物に近い印象を受けた。

また、キャラたちがスポーツカーに乗ってローマの街を疾走するシーンや、翼を失った飛行機に乗って雪山を下るシーンとか、いくつかのチェイスシーンも印象的に演出されてる。
『スペクター』じゃ、ボンドがまるで捜査官見たいに糸をつなぎ、その手がかりを追っていく。

今回のボンドは、リベンジを目的としているわけではなく、映画のタイトルにもなっている組織の内部に潜入するための糸を辿りたいと考えてる。
脚本家は、将来のボンド映画のために何かを残しておかなければならへんという理由から、影のあるSPECTRE組織がほとんどの秘密を保持することを許可してるけど、ボンドはクリストフ・ヴァルツ演じる謎のリーダーと接触することになる。

ここで、小生がこの映画に抱いている不満の一つが生まれる。
特に『スカイフォール』でハビエル・バルデムが景色を楽しむことを許されたのに続き、ワルツのような尊敬すべき俳優が銀幕の中でもっと活躍する機会を与えられなかったことにチョイ残念かな。

本作品のキャラは、表向きには過去のボンドの悪役を組み合わせたものやとされてますが、誰を指しているのかはネタバレになりますし伏せますが、
しかし、彼の動機やキャラの複雑さには、十分な深みや重みが感じられへんかな。
また、モニカ・ベルッチがボンドガールを演じた最年長の女性ということで話題になったけど(ダニエル・クレイグより歳3上歳5か月年上やっかな)、彼女の出番は最小限にとどまってて、プロットをゆるやかに進める程度のまるでカメオ出演のよう。
クレイグとレイドゥの相性はまずまずやけど、スクリーン上のロマンスとしては、現代のボンドシリーズの中で最も湿り気が効いているとも云えへんし感情移入しやすいとも云えない。
しかし、最終的には、試行錯誤された公式から逸脱しようとする努力をもっと感じ取りたかったかな。
ボンドは、これまで見たことのない状況に置かれたときににこそ、面白くなるし、もっともっと驚かされたかった(欲張りやけど)。
4作品観て、個人的にはダニエル・クレイグが演じた007は非常に素晴らしいものやったけど、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』がなきゃこの9年間のシリーズで、視聴者が感じた経験に有終の美をおくるには、ふさわしい何かが欠けていると思ったと思う。
とは云え、ダニエル・クレイグのファンの贔屓目として、小生自身は満足の作品でした。
余談になりますが、作中、『死者の日(El Día de los Muertos)』のパレードを舞台にしたオープニングシーンは、ジェームズ・ボンドの映画としては非常にユニークなモンで、初めはワン・テイクで撮影されたように見えました。
実際には3つのショットで撮影されており、カメラが大規模な群衆に向かってパンダウンする瞬間から始まり、仮面をつけたボンドとパートナーの女性を追い、ホテルの部屋に戻った後、ボンドがマルコ・スキアラに銃口を向けたところで終了してます。
このショットの内部はGran Hotel Ciudad de Mexicoです。

また、本作品でジェームズ・ボンドが乗る新しい車は、アストンマーティンDB10です。
アストンマーティン社のC.E.O.は、『ジェームズ・ボンドのために作られた、10台だけの厳密な限定車。DBシリーズの中でも最も高級な車です。" 』とツイートしています。
また、新たなスタイリングの方向性が示され、これまでのアストンマーティンには見られなかった、より角ばった外観となってる。
あと、音楽面では、アーティストのレディオヘッドが映画のメインテーマになる予定やった。
『Spectre』ちゅう曲をレコーディングしていたけど、この曲は『暗すぎる』という理由でボツになったそうです。
プロデューサーは、最終的にサム・スミスの『Writing's On the Wall』を選択しました。
レディオヘッドはその後、2015年12月25日にサウンドクラウドでこの曲を無料でダウンロードできるようにしていた。
YouTubeでありましたし、お時間あればどうぞ!

https://youtu.be/CLiDemXYSLc
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