エディ中野

007 スペクターのエディ中野のレビュー・感想・評価

007 スペクター(2015年製作の映画)
4.8
「JAMES BOND WILL RETURN」

毎度作品を堪能した後の、次回作への期待と心の拠りどころでもあるエンドロール最後に登場するテキストは今作にもある。
しかしながら、もう戻ってこないんじゃないかと思うくらい今作はシリーズ、あるいはダニエル・クレイグ=ジェームズ・ボンドの集大成に思えた。
前作のラストにおいて、Mが男性に代わったり、ミスマネーペニーの復活、Qの活躍、Mのオフィスが初期のようなセットになったりで、今作がこうなることは予測できてはいた。それがかえって不安になっていたのだが、漂うのは集大成感。

冒頭にガンバレル。これはシリーズの伝統。
それまでダニエル・クレイグになってからは新機軸ということもあったのだろう、冒頭にはなかった。4作目にして遂にガンバレルが冒頭に登場してしまった。いきなりの不安と集大成感。

モニカ・ベルッチ、ボンドが守った直後にセックスはシリーズ伝統の壮大なコントのひとつ。ここにも集大成感。

レア・セドゥのツンデレはボンドガールの伝統。列車での美しいドレス姿には震えた。他作品の彼女よりもプニプニしてます。
もし次回作があるのなら、冒頭でいきなり殺されボンドが復讐の鬼と化すところまで想像させてくれたあたりに集大成感。

前作よりも出番が増えたQ。以前のボンドを見守る親か師のようなQではなく、ベン・ウィショーは若く新鮮な今までにない新しいQを見事に演じ、提示された集大成感。

シリーズのオールドファンは喜ぶだろう。とにかく過去作、原作小説のオマージュ多数でニヤニヤが止まらない集大成感。

ダニエル・クレイグの新シリーズが気に入った新しいファンには軽薄にみえただろう、正直物足りない作品だったとおもう。

今作は上手く融合させているとはおもうが、007シリーズは未だおバカスパイコメディ路線か、シリアススパイスリラー路線かを模索し続けているようだ。
007はスパイファンタジーなんだとおもえば、今作は文句無しに成功している。

ショーン・コネリーとロジャー・ムーアが創り上げたウィットに富んだユーモア溢れるボンド像が、シリーズを壮大なおバカスパイコメディとしてヒットさせ、それがシリーズの伝統となった。
ティモシー・ダルトンが挑んだ原作のような重厚でリアリティあるボンドへの回帰は興業的に失敗した。
それまでの全てのボンドを上手くミックスしたピアース・ブロスナンは優秀な興業成績でシリーズを復活させた。
それら全てを超えたかもしれないダニエル・クレイグには、「カジノ・ロワイアル」「慰めの報酬」でみせたクールでタフでハードな新しいボンドでいて欲しかった。

今作を観る直前に「カジノ・ロワイアル」「慰めの報酬」「スカイフォール」を観ておくことをおすすめします。

次回作もダニエル・クレイグなら、極限のスパイスリラーをみせてほしい。復活したスペクターを活かすのなら「サンダーボール作戦」のリメイクもいいかもしれない。