TAK44マグナム

007 スペクターのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

007 スペクター(2015年製作の映画)
4.5
ダニエル・クレイグによる007シリーズ集大成。

とりあえず前3作を鑑賞しておいた方がベストな事は間違いありません。
余計な説明は入らないので、鑑賞しておかないと分からない部分が少なからずあるからです。
そして、観ていれば未見以上のカタルシスが得られることも間違いないと思います。

前作「スカイフォール」のラストにて、いよいよレギュラーメンバーも揃っての新体制が始動したダニエル≒ボンド。
本作はその後を受けて、良くも悪くもダニエル版以前の007シリーズの作風に近づけてあります。
重厚な雰囲気は残しつつ、ガンバレルで始まったり、ユーモアが散りばめられていたり、「007って、こんな感じだったなあ」と、この先のシリーズも見据えて荒唐無稽なスパイアクションという色合いを強く打ち出している印象を受けました。

冒頭、長回しから始まるアクションシークエンスからして、度肝を抜くような事が起きても、最後は冗談のようにボンドが助かる洒落っ気なんて正に007ですね。

それでいて、ついに姿を現した秘密組織スペクターとそのボスであるブロフェルドの設定は現代的にリファインされ、あくまでもリアル志向でもあります。
情報を制し、テロリズムによって自らの私腹を肥やしてゆく世界的な闇の組織・・・いかにも実在しそうです。

諸刃の刃といったところでしょうか?
過去作へのオマージュも、アクションシークエンスを含めてかなり強めですが、旧来のファンには嬉しいけれども逆に言えばアイデア不足と取られても仕方ないような気もします。
これからのシリーズに、更なる斬新さを期待したいですね。

全体的に面白い映画ではありますが、不満点もありました。

スペクターの計画が現実的すぎて地味、そして計画を阻止する場面にもあまり緊張感がなく、計画を遂行する中ボスがあまりにも小者で存在感も迫力も無かったのが、いくら本筋がボンドの個人的な戦いにあるとはいえ、もう少し何とかならなかったのか・・・。

ダニエル007シリーズ全体の黒幕であるオーベルハウザーを演じたのは、言わずと知れた名優クリストフ・ヴァルツ。
巨大組織を束ねるような人物に見えるかどうかが肝となりますが、個人的には、そこに関しては及第点といったところですね。
残念ながら演技自体はこちらの想定を超えてきてはくれませんでしたが、ボンド最大の敵という存在感は安定したもの。
ボンドを苦しめる理由を明らかにする辺りの、静かなる狂気は凄みを感じさせます。

あと、バウティスタが演じた怪力の殺し屋に、もう少し特徴を与えてあげても良かったのではないかな、と。
かつてのジョーズの鋼鉄の牙のような。
ボンドを追い詰めるパワーはすごかったですが、何かもうひとつ足りないような気がしました。
実は義手に何か仕込んだサイボーグだった・・・ぐらいのサプライズはあっても良かったのになあ。

満足な点としては、ベン・ウィショーがかなり活躍するのと、レア・セドゥがやはり魅力的でしたね(対してモニカ・ベルッチはあまりにも出番が少なくて驚いた)。
それと笑えるところが割と多く、長尺な事もあって、ちょっとした息抜きにピッタリでした。
ラストも気が利いているし、好みでした。ボンドの今までのハードさを思うと、心の底から良かったなあ・・・と、手を振りたくなりましたよ。感慨深かったです。


以上、ちょっと忙しいので駆け足になってしまいましたが、個人的には前3作と比べて、単純に派手で粋なアクション映画として楽しめました。
全007シリーズの中でも高い完成度を誇る一作かと。
2015年の締めくくりとして、非常にふさわしい映画を選べたと思います。

それでは皆さん、良いお年を!
そして2016年も良き映画ライフを!


劇場(字幕)にて