恭介

マッドマックス 怒りのデス・ロードの恭介のレビュー・感想・評価

4.6
裏ベストムービー⑤

裏じゃないレベルの傑作なんですけどね(笑)

まず、このサブタイトルを考えた人、賛成した人、決断した人に拍手を贈りたい。

怒りの

デスロード・・デス!ロード

意図的であろうが、まるで80年代の未公開映画に使うような単語を、恥ずかし気もなく持ってきた勇気を讃えたい。
一応、原題のフューリーロードにも気を使ってるし、端的に映画の内容にリンクした素晴らしいサブタイトルだ。

ま、ぶっちゃけ最初は、おいっ!って思ったけど(笑)

そんな新生マッドマックスのストーリー。


逃げて、そして来た道を帰る


これだけだ(笑)たったこれだけのプロットなのに、最初から最後まで釘付けになる映画ってなかなかない。キャラクターはもちろん、マッドマックス名物、第二の主役である乗り物のデザイン、世界観、アクションの魅せ方などなど、監督ジョージ・ミラーのマッドなマックスワールドがさらにパワーアップし、文句なく傑作と言える。

本当に、ベイブやハッピーフィートを監督した人なのか?と疑ってしまうぐらい、なんと振り幅がデカイ監督なんだ(笑)

マッドマックスの新しい作品がようやく動き出した、というニュースを聞いてからかなり待たされた。まさに待望という言葉がぴったりの作品。

しかし余りに年月が経ちすぎて、人によってはマッドマックス2を観て、北斗の拳のパクりじゃんってなるぐらいだ(笑)
確かに心の何処かで、今更マッドマックスって・・というのは正直あった。

しかし、旧三部作に圧倒された者、とくにパート2に感化された者としては期待せずにはおれなかった。

そしてついに劇場鑑賞する日を迎える。

因みに試写会だった(笑)

なんとまぁしかし、なんてスキのない映画だ。主役から準主役、脇役、チョイ役まで超個性的なキャラクターばかり。まるで世紀末版ディズニーランドのようなキャラクター祭りじゃないかっ。

開始早々にして、不安は杞憂だったとすぐに分かるぐらいの素晴らしさ。

そして本作が傑作と称される最大の要因はその世界観の作り込みだ。それはアカデミーが、こんな権威に一番程遠いと思われる作品を無視できず、美術や衣装など5部門で賞を授けた事からもよく分かる。
まさか、あの華やかな壇上で、マッドマックス!というタイトルを聞ける日がくるとは(笑)

確かにタイトルはマッドマックスだが、中身はシャーリーズ・セロン演じるフュリオサが主人公じゃね?な観方も出来る。もともと無口なキャラクターだったマックスだが、本作は更に輪をかけた寡黙さだ。

だが、過去の色んなトラウマや後悔を拭い去れず、こんな荒れ果てた世界でひっそりと生き抜いている孤独なマックス。

望んで誰かを助けているわけじゃなく、いつも厄介ごとに巻き込まれ、嫌々、渋々、協力する。そう、マックスは至って普通の男なのだ。特別何かに秀でてる訳でもなく、スーパーパワーをもつ超人でもない。

怪我するわ、死にかけるわ、捕まるわ、踏んだり蹴ったりな毎日だ(笑)

しかし、この狂った世界で平常心を保ち、サバイバルのスキルを身に付け、何処からともなくフラリと現れる。そんなさすらいの一匹狼的なところが魅力であって、自己主張が激しい他のヒーローとは質が違う。

パート2でもサンダードームでも、必死に生きようとしている人々と触れ合った事で、徐々に心を開き、わすれかけてた感情を取り戻し、共に闘う。
そんなマックスのスタイルは、本作でも希望の為に闘った瀕死のフュリオサに、初めて名前を告げるシーンに引き継がれている。それまでにもかなり心を開きつつあったが、あのシーンで完全に本来の人間らしいマックスに戻り、そんなマックスに出会った事で、誰も信じる事ができなかったフュリオサの心にも希望が芽生えた、そんな重要なシーンだ。

また、片腕、坊主頭という視覚的にも個性を全開に出しているフュリオサに対して、マックスは逆に個性を消しているかの如く、目立たない。その対比から生まれる魅力の相乗効果も、キャラクターにブレがないからこそ生まれてくる。

そこはマックスというキャラクターの生みの親で、脚本と監督を誰かに任したりせず、創作し続けているミラー監督にしか出せない一貫性だ。

もちろん、極力CGに頼らない、生身のアクション、スタントを抜きにしてはマッドマックスの魅力は語れない。
初めて劇場で観た時、自分の心拍数が上がるのが分かるぐらいの興奮を覚えた。
撮影技術の進歩とミラー監督の衰えぬ創作意欲が見事に合致した成果だ。

誰も考えつかない監督のイマジネーションが炸裂したカーアクションの魅せ方は唯一無二で、まさに芸術の域にまで昇華している。

間違いなく本作は、いろんな意味でカーアクション映画では最高峰だ。なかなか本作を超えるのは難しいだろう。
マックスを超えるのはマックスしかない。
さっさとワーナーと仲直りして、続編をお願いします、ミラー監督(笑)
恭介

恭介